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2008年7月4日

◎東海北陸自動車道開通 高山と「三つ星連合」も一案

 東海北陸自動車道の全線開通を機に、「兼六園」や「高山」といったミシュラン観光ガ イドで最高の「三つ星」を得た観光地を核として、新たな黄金の旅行ルートを作る動きが出てきたことを歓迎したい。

 石川、岐阜両県が、欧米やオーストラリアからの誘客を本格化させるほか、金沢市は今 年度から、岐阜県高山市、長野県松本市とともに三市間で海外からの観光誘客に向けて協議会を新設した。金沢の中心商業地域が、時間にして四十五分短縮される飛騨地域からの買い物客を取り込む動きを見せるなど、多様な活性化策も出てきただけに、金沢と高山が「三つ星連合」を組んで、双方に利益をもたらす「ウィン・ウィン」関係を築くことも意味があろう。

 就航から一カ月を経た小松―台北便は、石川県の調査で「小松から入国し、中部から出 国」あるいは「中部から入国して、小松から出国」というコースの利用者が多いことが分かっている。

 東海北陸道を大動脈として、独特の歴史的街並みが色濃く残る金沢市や高山市、世界遺 産の五箇山や白川郷の合掌造り集落、郡上おどりで知られる郡上市や国宝瑞龍寺のある高岡市など魅力的な町もある。歴史や文化に関心が高い欧米客にも訴えるはずである。

 ミシュランガイドの格付けによると、地域を東海北陸道を軸にした中部一帯に絞ってみ れば、「観光地域」のくくりでは、高山が三つ星、金沢が二つ星、能登半島が一つ星となっている。「観光施設」の面では、兼六園と飛騨高山美術館が三つ星を得たのをはじめ、無印を含めた同誌掲載数は石川三十六施設、岐阜十七施設と両県に見どころが集中している。

 とりわけ金沢と高山は、欧米客が好む観光地の集積度という面で二大拠点と言えよう。 両県、両市が足並みをそろえ、格付け効果を利用して、互いの持つ最高レベルの観光地を巡るルートを提案することは理にかなっている。

 客層のさらなる開拓に向けて、旅行会社、メディアの招へいをはじめ、海外での出張セ ールスなども組み込んで、精力的に「三つ星効果」を発信してほしい。

◎東証11日連続安 行き過ぎた悲観は危険

 日本株の下落が止まらない。日経平均株価の十一営業日連続安は五十四年ぶりというか ら、市場心理は今が「陰の極」なのだろう。欧米や中国など新興国に比べると、これまで日本株はインフレに強いという見方から、外国人投資家の継続的な買いが続いていた。このところの異常な原油・原材料高は、そんな長期的視野に立った投資を吹き飛ばしてしまうほどの破壊力があった。

 暴落や暴騰に直面すると、人は冷静さを失い、相場は思わぬ安値や高値を付けることが ある。行き過ぎた悲観論は、国民の心理を冷やし、実体経済にまで悪影響を及ぼす。巨額の投機資金が流入している商品市場や株式市場に一喜一憂せず、消費や投資を過度に絞り過ぎぬようにしたい。

 東京株式市場の日経平均は、この十一日間で実に一一八七円も下げた。欧州中央銀行理 事会で、利上げが決まると、さらにドルが売られ、ドル建てで取り引きされている原油が上がるとの見方から、ニューヨーク原油は史上最高値の一バレル=一四五ドルを突破し、一五〇ドルが射程に入ってきた。米国の原油在庫が市場予想より少なかったことやイラン攻撃のうわさも市場の不安を増幅させている。

 米国では、原油高に加えて、サブプライムローンの重しから、消費の低迷が懸念され、 ダウ平均は六月としては七十三年ぶりに10%超の下げを記録した。GMの自動車販売台数は前年同月比18・3%減となり、倒産説までささやかれるほどである。また、五輪景気で上昇を続けてきた中国株の下げはさらに厳しく、上海総合指数は現在、昨年十月のピーク時の半分以下にまで落ち込んでいる。

 サブプライムローン問題の後遺症が残る欧米や、インフレの進行で金融引き締めに動か ざるを得ない新興国に比べると、日本株は相対的に有利な立場にあると見る専門家は多い。インフレになればなるほど省エネ技術に優れ、環境ビジネスに強みを持つ日本の優位性が際立つという。個人消費や企業投資の落ち込みを招くような過度の悲観論のまん延は、何としても避けねばならない。


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