恋愛・結婚

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

スローライフ スローセックス:PMDD(月経前不快気分障害)

 今回の原稿を書き進める前に、読者の皆さんにお礼とおわびを申し上げます。「Dr北村への相談」。週に10通を超える相談が寄せられていますが、紙面の都合からとてもすべての質問にお答えすることができません。

 どうしてここまでセックスレスの悩みが尽きないのかとぼやきたくなるほどにセックスレスの相談が集中しています。ご本人にとっては深刻な悩みなわけですから、ぼやき続けるわけにもいかず、あらためて『セックスレス大特集』が組めたらいいなあと考えております。

 ということで、今回は数多く寄せられている相談の中から理恵さん(33歳)の悩みを取り上げてみました。月経前になると、腹痛や腰痛に加えて、イライラが募り、時には激昂することとのこと。理恵さんにとっての疑問は、月経前症候群とうつ病との違いは何かという点のようです。

 月経前症候群(Premenstrual Syndrome:PMS)については、「Dr北村ただ今 診察中」第4話で取り上げていますが、PMSの中でうつ状態が起こるものにPMDD(Premenstrual Dysphoric Disorder)日本語では月経前不快気分障害があります。現在、わが国で検討されているPMDDの診断基準と理恵さんの症状を照らしてみました。

 PMDDの定義は、「過去1年の間の月経周期のほとんどにおいて、以下の症状の五つ(またはそれ以上)が黄体期(筆者注:排卵から次の月経までの間。高温期を形成する)の最後の週の大半の時間に存在し、卵胞期(筆者注:月経の開始から排卵までの期間、低温期を形成する)の開始後2、3日以内に消失し始め、月経後1週間は存在しない」と書かれています。もちろん、理恵さんのメールからはこのような症状が1年間以上続いているかどうかは判断できませんが、「著しい抑うつ気分、絶望感、自己卑下の観念」「著しい不安、緊張、“緊張が高まっている”とか“いらだっている”という感情」「著しい情緒不安定性(例:突然、悲しくなるまたは涙もろくなるという感じ、または拒絶に対する敏感さの増大)」「持続的で著しい怒り、いらだたしさ、または対人関係の摩擦の増加」などは理恵さんの訴えておられる症状に近似していますのでPMDDの可能性は高いと思われます。

 PMS(この場合にはPMDDですが)とうつ病の違いというご質問ですが、「月経の前になると起こり、月経が始まると症状が消失する」のであればPMDDと考えてよろしいかと存じます。しかし、PMDDには、うつ病、パニック障害、パーソナリティ障害などが合併していることが多く、完璧に鑑別することは容易ではありません。治療法については、薬物療法、生活指導(ストレス、睡眠、規則正しい食事、定期的な運動)、対症療法(症状の改善を目的とした治療法)が一般的に行われていますが、婦人科では、抗うつ剤、精神安定剤、経口避妊薬(ピル)、漢方などが広く使われています。抗うつ剤の中では、不安や焦燥、意欲低下にも有効なSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)が使われ効果を表しています。

 このように、PMS中でもうつ症状が加わるPMDDについては“うつ”の症状改善と同様な治療法が行われることが一般的です。しかし、この病態が婦人科疾患なのか精神科疾患なのかわかりづらいことが僕たち婦人科医を悩ませています。

 月経との関係が否定できないというのであればひとまずは婦人科での受診をお考えになってはいかがでしょうか?

2008年6月5日

 

おすすめ情報