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スローライフ スローセックス:やりたい男、やりたくない女

 「僕が求めると間もなく、彼女のカラダ全体が震え始め、『これ以上は止めて』と懇願されるのです」。ポルノ小説の一場面ではありません。先週はセックスを拒否されるという男性(24歳)からの相談をはじめ、セックスが苦痛だという女性からのメールが相次ぎました。

 「性を病むニッポン」を実感させられるメールの数々。女性側の言い分もわからないではありません。結婚2年目だというAさん(28歳・女性)は、「旦那さんとは7年間つきあった後結婚しました。現在子どもも生まれました。以前はよくセックスもしていたのですが育児の疲れもありなかなかするのに気合いがいります。(中略)旦那さんは すぐに胸や性器を触りたがります。そうされると余計に嫌気がさすのです。旦那さんのことが嫌いになってくるのです。北村先生が言われるようにやさしい言葉をかけてもらって、髪の毛や背中などゆっくり触ってもらうととっても嬉しいし気持ち良くなります」と率直な気持ちをつづっていました。

 「私を助けてください」で始まるBさん(40歳・女性)からのメールはこうです。「私は『挿入』に対して強い恐怖を感じてしまい、未だに挿入経験がありません。十数年付き合っていた5歳年上の彼は何度も試みてくれたのですが、私がどうしても怖くなって、途中でやめてもらうようなありさまでした。(中略)過去レイプや性的虐待を受けた経験や記憶はなく、唯一、もしかしたら、という記憶にはたどり着きました。小学生のころに学校で女子だけ集められて見せられた『生理』や『出産』についての教育ビデオです。見終わった時の感想は、『神秘的』でもなければ『喜び』でもなく、ただただ『グロテスク』とか『強い恐怖』というものでした。挿入以外の性交は嫌いではないのですが、どうしても挿入だけが怖いのです。なので、婦人科も怖くて行く事ができません」

 Cさん(32歳・女性)からは「こんにちは。SEXをすると、物凄く嫌な気持ちがこみあがってきます。罪悪感と言いますか、私はなんでこんなことをしているのだろうと……。最中でも終えた後でもこみ上がってきて、エンエン泣いたり、震えたりるすので、怖くてSEXできません」

 僕自身があえて語るまでもなく、3人ともに自己分析がきちんとなされています。世界保健機関の分類「性の嫌悪」の項目には「相手との性行為が予想されると強い否定的な感情が起き、性行為を回避するほどの恐怖や不安が生じる」とあります。『セックスレスの精神医学』(ちくま新書)の著者阿部輝夫先生は、性を嫌悪するようになった原因として、夫との口論、夫の度重なる勃起障害、夫の浮気、レイプ体験、父親の浮気に苦労させられた母親を身近に見ていた、近親姦、親や周囲から性は汚いこと、いけないことなどとすり込まれた経験がある、中絶や流産による胎児の喪失感などを挙げています。

 限られた紙面で治療法を語るのには限界がありますが、同書によれば、初期治療として「性的空想」を抱かせるとしています。性的想像力を豊かにするために、ロマンチックな小説やソフトポルノなどを読んでもらうというのです。視覚や聴覚に訴えるアダルトビデオなどもいいかもしれません。マスターベーションの楽しさなどを実感できるようになればしめたものです。その後は性器結合にこだわらずリラックスした状態で互いのスキンシップを図り、性に対する恐怖を心地よいものに変えていけるかどうかです。

 性の研究に取り組んでいる数少ない学際的団体(日本性科学会)のHPからあなたに役立つ情報を探してみることから始めてみませんか。

2008年6月19日

 

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