先週、スタジオで録音したTVの音楽、いわゆる劇伴、と呼ばれるものですが、さっそく来週7月9日からTV番組は始まってしまうのでした。NTV系列・水曜夜10時からの「正義の味方」という番組です。主演は山田優さんがお姉さん。そして志田未来さんが妹役。だそうです。

この番組、集まったスタッフはプロデューサーも、演出家も、サントラ盤の担当ディレクターも、そしてぼくの作った楽曲を直接ドラマに当て嵌める「サウンドデザイン」という仕事を担当する方も、すべて、かつての「喰いタン」と同じチーム。「喰いタン」は最高に楽しい仕事でしたから、一も二もなく引き受けたのですが、コレが意外とタイヘンでした。

やはりスケジュールがタイトであること。それ以上に音楽のバジェットもタイトですから、しっかり曲を書いて、この部分は保留、とか、後で何とかしよう、と言うことなしに、しっかり細部を決めて、スタジオに臨みました。4日で6曲完パケ。けっして多い数ではないけれど、生リズムならではの音になった、と思います。

生リズム、つまりスタジオにミュージシャンを集めて、自分の書いた譜面を元に演奏してもらって音楽を作るのは、打ち込みの仕事と同じくらい好きで、自分の中ではどちらが得意、とか、どちらがメイン、ということはないくらい、なのですが、いっぽう、ムズカシイな、と思うこともあって、その最大の理由はぼくたちが好きな古いレコードを録音した時代と現代とでは、録音機材などがまったく違うこと。

つい数年前まではテープに録音していたのですが、いまはそれもない。大昔は広いスタジオの中央に2本のマイクを立てて「せーの」で演奏していたけれど、いまはそんなことをしない。真空管式のリミッターもない。そんないろいろなテクノロジーの変化のせいで、昔のレコードのあのサウンドを作ったりするのがムズカシイ。特に映画のサウンドトラックなんて、フィルムに直接、音を焼き付けていたわけですから独特の悪い音がして、それがサントラの魅力でもあったのですけど。

それが今回、いちばん最新のエフェクターで、古い音をシミュレイトする、というやり方で、けっこうスゴイことが出来たのです。まあ、アナログ・レコードの音質に近くするために、アナログの針が周回する音を薄く混ぜたりする、という「なんちゃって」テクニックに近いことなのですが。

自分の作った音楽は、いわば素材。のちに発売される予定のサントラ盤を最終的なカタチ、と想定して音楽を仕上げました。実際の番組で、ぼくの作ったいくつかのテーマやメロディを当ててみたり、エディットしたり、つまり演出に合うように仕立ててくださるのは、サウンドデザイン担当の石井和之さん、という方。以前「喰いタン」での素晴らしい編集ぶりにすっかり驚き感激し、この人にお任せしておけば大丈夫だと思いました。ぼくもまたTVの前でどんなふうに使ってくれるの、とワクワクしながら観ていようと思います。

さて、きょうの「レコード手帖。」は松永良平さん。アメリカへ行く飛行機の中で書いた、とのこと。なんだかカッコいいですね。でも、今回のお話、ぼくはまったく笑えなくて困りました。わはは。やれやれ。

ビーチェさんの待望のアルバム「かなえられない恋のために」いよいよ7月23日発売。発売までもう3週間を切ったのですね。では、きょうも。

(小西康陽)