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| [2008.6.3] |
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第195回
(株)商業システム研究所 代表取締役所長 料冶宏尚氏 |
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| 小売業よ、「こだわり続ける」匠であれ! |
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経営者の哲学が再度問われる時代
「地域の財産」と認知される店づくりが重要 |
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イオン(株)が「岡田屋」、ユニー(株)が「西川屋・ほていや」と呼ばれていた時代、日本の商業コンサルタントの第一人者である成瀬義一氏に師事し、(株)商業システム研究所代表取締役所長の料冶宏尚氏(=写真)は、商業コンサルタントへの道を踏み出した。
以後50余年、日本のGMSの誕生から現在に至るまで、商業界を取り巻く状況は刻一刻と変化を続けている。近年は、原油価格や食料品価格の高騰、食品安全問題など予測困難な事件が企業を翻弄し、多大なインパクトを与えている。商業施設分野では、「まちづくり3法」(中心市街地活性化法・改正都市計画法・大規模小売店舗立地法)の影響に関心が集まる。流通・小売業界の現況と、これからの課題について同氏に話を伺った。 |
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―― 小売業を取り巻く現在の環境について。
料冶 小売業は、売り手よりも買い手が多い時に成長するもの。しかし、かつて隆盛を誇ったGMSですら、その業態が事業として成立しにくい時代に変わりつつある。「より良い商品をより安く」「欲しいものを、欲しい時に、欲しい値段で、欲しいだけ」では、これからの時代の貢献としては不十分だ。今や、消費者はモノを供給されただけでは満足しない。祝い「ごと」や習い「ごと」、祀り「ごと」という「コトの文化」が付与された商業施設や、心を動かされる感動・新発見を与えてくれる商品を求めている。
文明価値は、時の経過とともに劣化し、文化は時とともにその価値が高まる。例えば、日産自動車が生んだ名車「スカイラインGT-R」の人気は今もって衰えていない。2007年に発売した「スカイラインGT-R」の後継車「NISSAN GT-R」の先行予約には、当初の月販目標である200台に対し11倍超の注文が殺到したという。これこそ、コンセプトの文化が勝利した典型的なケースと言える。
―― これからの小売業に必要なこととは。
料冶 企業の経営理念とCEOの人となりが、もう一度問われる時代に来ている。今の日本の小売・流通業界に、はたして経営者の哲学を形にした商品・店舗がどれだけあるだろうか。トヨタが世界最大の自動車メーカーに成長し、松下電器産業が業績を奇跡的に回復させたのは、アメリカ流資本主義、つまり金融資本主義とはまったく似て非なる匠の哲学を持っていたからだ。25年前に販売した石油ストーブの不良品を今も回収し続けるなど、現代の常識では考えられない。「匠のこだわりと良心」とは、そういうことを言うのだろう。
国内の小売業者もまた同じように、販売する商品にこだわり、その売り場と店づくりにこだわり、商店街や通りや周辺の環境にもこだわる、あらゆることに「こだわり続ける」匠でなければならない。真に「お客様のため」と呼べるサービスとは一体どういうことか、SMやSCの年中無休・深夜営業などもエネルギーコストを考えた時に、再考の必要があるのではないか。
―― 07年11月にいわゆる「まちづくり3法」が法整備されたが、その影響は。
料冶 出店企業が立地を選ぶ時代から、地域が出店企業を選ぶ、または誘致する時代に変わった。これからは、「この店は地域の財産だ」と認知される店づくりが新規出店の条件となってくるだろう。今後の店舗開発は、区画整理事業のように行政が主導するまちづくりの一環として、主に売り場面積5万m²以上の大型SCか、もしくは生活必需品の売り場面積1万m²、平屋建てのスーパーストアが主流になる。
―― 地域に貢献し、地域に認められるには何をすべきか。
料冶 私の考える具体的な地域貢献策として、1)新店で年間3%以上の税前純利益を確保し、その半分の納税義務を果たすこと、2)どんなお客様を対象に、どんな商品を、どの価格帯で販売するかについて、そのMDのコンセプトと必要売り場面積とを明確に示すこと、3)地域活性化対策として地元金融機関との取り引きを優先するほか、地元の祀り事、祝い事、諸イベントには積極的に参加(人・物・金)すること、4)お客様の日常生活の省エネと節約対策を具体的に提案すること、5)日本人の文化の原点である元日の営業はせず、雇用改善・防犯・省エネ対策からも平日夜9時以降の営業を行わないこと、6)買い物客の「安全」と「安心」について具体的にその仕組みを説明すること、の6項目を挙げている。
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| 商業システム研究所が企画・基本設計等を手がけたFKDインターパーク |
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| FKDインターパークの「IPS STADIUM」全体企画設計と施設コーディネートを担当 |
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| (聞き手 古沢大輔記者) |
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▼(株)商業システム研究所
〒140-0011 東京都品川区東大井5-6-13 CCビル Tel.03-5782-7111
http://www.ccsystem.co.jp/
1974年8月20日設立、資本金5000万円、代表者=代表取締役所長 料冶宏尚氏 |
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