 田中真紀子(左)と雪村いづみ |
ジャズ歌手や演奏家らが多く参加する「社団法人日本音楽家協会」(東京)で、理事や会員が知らない間に“会長”が交代する珍事が起きている。新会長になった人物は「田中真紀子元外相の隠し子だ」と自ら触れ回り、大物芸能人が勝手に名前を使われたとして怒りの声を挙げている。永田町や芸能界を巻き込んだ騒動に発展しそうだ。
日本音楽家協会はジャズミュージシャンを中心とした業界団体で、1948年2月に東京都認可のニッポンミュージシャンズユニオンとして設立され、75年に文部省に移管されている。
協会で前会長の自民党の愛知和男氏に代わって、会長に就いているのが俳優兼作家の寺西一浩氏(28)。所属事務所が公表している経歴によると、寺西氏は3歳で子役デビュー、慶応大法学部を卒業後、2004年に芸能事務所社長に就任している。
協会の公式ホームページなどによると、会長を含め15人の理事がいて、著名なジャズミュージシャンや音楽評論家が名を連ねる。
 島倉千代子(左)と日野皓正(クリックで拡大) |
だが、理事となっているトランペット奏者の日野皓正氏の事務所関係者は「日野は今、自分が理事になっていると思っていないのでは」と驚き、「寺西氏とは面識もまったくない」と戸惑う。同じく理事に名を連ねる音楽評論家の永田文夫氏は「理事? 何かの間違い。顧問になってくれと先月、事務局から依頼はあったが」と困惑。中堅会員は「会員が協会の正常化に向けて事務局と交渉をしようにも無視されている」と内紛状態にあると指摘する。
協会を管轄する文化庁では「2日現在、役員の異動届は出ていない。定款に会長、理事を含む役員の選出は理事会、評議会の互選で行うとあるので、理事や会員が知らない間に新会長が就任することはありえない」とし、会長は愛知氏のままになっているという。今後、異動届が提出される可能性もあるが、「事業年度の報告書の提出締め切りは6月30日なので、通常なら一緒に異動届を出すはずですが…」と首をかしげる。
寺西氏をめぐってはトラブルが相次いでいる。
歌手の雪村いづみさんは昨年3月、ホテルオークラで開いた芸能生活55周年記念パーティーなど何度かのステージ運営を寺西氏に依頼。ところが、今は悔やんでいるといい、雪村さんの事務所関係者は「寺西氏の所属事務所に雪村が移籍したと触れ回られ、『おかしい』と思い調べてみた。田中真紀子さんの親戚という触れ込みだったので信用したが、ウソだった。今さらいくらだまし取られたなんて、恥ずかしくて言えない」と話す。
島倉千代子さんも被害を受けた。寺西氏が島倉さんの所属事務所代表になっていた時期があり、スタッフは「真紀子さんの子供と言い回っていた。短期間だが弊社の代表だった。でもスタッフの誰もが彼を知らなかった。あんな人物とはもう関わりたくない」と憤る。
寺西氏は02年に「ありがとう眞紀子さん」というエッセーまで出版している。
だが、田中元外相の事務所は寺西氏について「面識はあるが『隠し子』というのは真っ赤なウソ。赤の他人だ。著書は読んだことがないし、一連の行為は初めて聞いた。とんでもない話で迷惑だ」と激怒し、「弁護士と警察にただちに相談する」としている。
一連の騒動について、寺西氏の事務所に見解を求めたところ、「日本音楽協会の会長就任パーティーは(6月)21日で、弊社所属は翌22日から。所属以前のことは関知していない。真紀子さん、雪村さんとの関係は本人しか分かりません」とし、本人からの回答は得られなかった。
ZAKZAK 2008/07/03