音声ブラウザ専用ショートカット。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用ショートカット。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

日経エコロミー

環境とビジネスに関する最新ニュースとお役立ちコラム満載


4次元エコウォッチング(安井至)

メーカーの「省エネ」情報は正しいか(08/07/02)

安井至(やすい・いたる)
科学技術振興機構 シニア・フェロー、東京大学名誉教授。1945年東京都生まれ。東大工学部卒。環境科学(環境負荷総合評価、ライフサイクルアセスメント、環境材料、グリーンケミストリー評価尺度)を専門分野とし、日本LCA学会副会長などを務める

 ここまで地球温暖化がメディアに取り上げられるようになって、家庭やオフィスにおける温室効果ガスの排出がさっぱり減らないことが問題にされると、個人のエコ意識を変え、エコ行動、特に省エネを「おすすめする記事」が増えてくる。企業も省エネを売り物にして自社製品の売上拡大を狙っている。はたして省エネに関する記述はどのぐらい正確なのか。検証してみたい。

■粗大ゴミと二酸化炭素ゴミ、どちらが「もったいない」?

 

 6月28日付の日本経済新聞夕刊で特定非営利活動法人気候ネットワーク(京都市)の平田仁子東京事務所所長が解説している記事「省エネラベル 上手に活用・家電選び、環境に優しく」である。

内容を要約すると以下のようなものである。

 家電を選択するときに、参考になるのが、☆マークが並んでいる統一省エネラベルである。店頭のほか、ネットや冊子などにまとめられており、各製品の省エネ性能を比較できる。

 買い替えを促す「家電業界の宣伝材料」と思っている人もいるかもしれない。しかし、実は、東京都が2002年に環境団体などと協力して始めた制度がもとだ。徐々に各地に普及し06年から国の制度になった。ラベルを上手に活用し、電気代と温暖化ガス削減につなげてほしい。

 ラベルの対象は、冷蔵庫、エアコン、テレビの3つ。まずは、星の数。相対的な省エネ性能を5段階評価で示しており、5つ星がもっとも高性能だ。

 次に見てほしいのが統一省エネラベルの一番下に印刷してある「1年間使用した場合の目安電気料金」だ。同じ5つ星でも、機種によって意外に異なる。年間消費電力(kWh/年)に22円を掛けたものである。

 気を付けてほしいのは、冷蔵庫だ。06年5月に日本工業規格の測定方法が大きく変わった。前の方法は、市民団体などから「実際の消費電力量に比べて少なすぎる」との指摘もあり、使用実態に近い大きさの値がでるようになった。古い冷蔵庫の消費電力量をざっくり3倍すると新しい方法で測定した値にそう遠くない数字になるようだ。

 各家電製品の省エネ性能はこの10年間で大きく向上した。単純比較は難しいものの、ざっと3分の1から半分前後減ったようだ。10年以上前の機種なら買い替えでかなり温暖化ガスの排出を減らせる。


 こんな趣旨の説明であった。たしかに、その通り。冷蔵庫、エアコンはそうかもしれない。したがって、10年前の機種なら買い替えることが温暖化防止には効果的だということになる。

 平田さんは、以下のように述べている。

「ただ、温暖化ガスは製造や運搬、廃棄の際にもでる。冷蔵庫は10年以上使った場合、使用時の排出量が9割を占めるとされるが、必要もないのに、むやみに買い替える必要はないだろう。

 計算上は、買い換えた方が製造や廃棄を含め温暖化ガスの量を減らせる場合もあるが、資源やゴミなどの別の問題もあり、もったいない精神にも反する」


 この最後のところは議論があるところである。筆者も、家電リサイクル法が運用される以前は、全く同じ意見だった。最近、家電リサイクルによるリサイクル率は、こちらのページで公表されている。平成19年にはエアコンだと87%、冷蔵庫だと73%である。以前と異なり、最近のリサイクル率には、熱回収分を含んでいる。しかし、それにしても、かなり高いリサイクル率である。エアコンの場合には、特にそうだが、少なくとも資源の有効活用はなされていると理解した方が良い時代になったのではないだろうか。

 環境負荷と言えば、なんでも二酸化炭素排出量で評価できると考えるのは間違いではあるが、二酸化炭素も結局はゴミである。となると、普通のゴミを出すからもったいないということも一概には言えないということにならないだろうか。二酸化炭素ゴミを出すことももったいないことなのではないだろうか。

 もう一つこの記事で不足していることは、現時点でもっとも重要なテレビに関する記述が無いことである。2011年にアナログ地上波が止まるため、多くのテレビは買い替えられるだろう。すなわち、省エネが極めて重要な製品である。06年以前の冷蔵庫の場合のような誤魔化しは無いのだろうか。

>>次ページ■液晶テレビの消費電力低下はどこまで本当か

※ ご意見・ご感想はこちらのリンク先からお送りください。ご氏名やメールアドレスを公表することはありません。

「4次元エコウォッチング(安井至)」最新記事

さらにこの連載コラムのバックナンバーを見る

その他の新着コラム

すべての連載コラムを見る

おすすめ! 新着記事 Recommend

連載コラムインタビュー

環境ニュースサイト(日経エコロミートップ)