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4次元エコウォッチング(安井至)

メーカーの「省エネ」情報は正しいか(08/07/02)

今回、検証の対象となるシャープの52V型液晶テレビ「LC-52EX5」

今回、検証の対象となるシャープの52V型液晶テレビ「LC-52EX5」

 となると、問題はPA1としてどのぐらいの値が設定されているか、ということで、それによって年間消費電力は大きく影響されることになる。

 シャープの広告で引用されている機種は、4年前のものとして、32V型LC-32GD1、そして、現時点のものとして、32V型がLC-32D30、52V型がLC-52EX5である。

 これら3機種について、消費電力に関する数値を算出してみた。なお、4年前の製品のデータも、インターネットを探るときっちり分かる。良い時代になったものである。

 表1がその結果である。低減消費電力PA1として採用されている値が4年前のモデルでは、動作時消費電力169Wに対して103Wであった。その解釈だが、通常状態であれば、169Wの消費電力であるが、暗い状態になると、103W分の消費電力が低減され66Wで動作すると読める。しかし、もしかすると、そう単純ではないのかもしれないが。

消費電力に関する数値を算出した結果

消費電力に関する数値を算出した結果

 なぜならば、2008年モデル32V型だと、動作時消費電力が144Wに対して、低減消費電力PA1が285Wだと算出されるからである。このテレビは、普通に動作しているときには、元々144W程度の電力を消費しているだけなのに、暗い状態にすると、285Wもの消費電力が低減され、消費電力は、マイナス140Wになるという勘定になるが、そんなことは起きるはずが無いからである。

 恐らく、こんな仕様になっているのだ。最近のテレビは、量販店で販売されることが多い。量販店の照明の明るさは半端ではない。極めて明るい。消費者をバカにした話でもあるのだが、そんな条件下で、ギラギラした画像で自己主張をしないと、液晶テレビは消費者に買って貰えないのだ。そのため店頭では、通常の動作時の消費電力の2倍に近い電力を使っている。そのためこのような機能のある機種については、節電装置で節約可能な電力を示すのがPA1の値なのだが、本来の意味を完全に失っている。

 要するに、シャープの広告における数値は、規格として定められた算出方法が元々説いた本来の意図から完全に外れてしまったことを利用した数字のマジックといえる。

 同じ表の下2行に、もしも動作時消費電力というものと待機消費電力だけを信用した場合の、年間消費電力の予測値を出してみた。その結果からみても、確かに32V型だと、15%ぐらいの省エネになっていることが分かる。メーカーも省エネの努力はしているのだ。しかし「半減」というのは数字のマジックだ。

ソニーが販売する液晶テレビ「ブラビア」JE1シリーズ「KDL-32JE1」。省エネ性能が期待できそうだ

ソニーが販売する液晶テレビ「ブラビア」JE1シリーズ「KDL-32JE1」。省エネ性能が期待できそうだ

 消費者という立場からの消費電力で言えば、52V型が4年前の32V型と同じ程度であるという記述は、まったく嘘だ。まあ2倍程度の電気代を支払うことにはなるだろう。しかも、最近の機種は、利便性を向上するためだろうか、クイックスタートと称してわざわざ待機電力を大きくしたモードが存在している。このモードを使った場合には、さらに高い電気代を払うことになる。消費者も賢くならないと、メーカーの広告に簡単に引きづられて高い電気代を払うだけでなく、結果的に、大量の温室効果ガスを排出してしまう羽目に陥るのだ。

 他メーカーの製品だと、ソニーのKDL-32JE1というモデルに注目したい。こちらはシャープのモデルと違って、本当に消費電力半減かもしれないのだ。

>>次ページ■古紙偽装、そしてトップ企業の責任

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