人それぞれに体形や好みが違います。なのに同じサイズや形の服しか与えられなければ、着られないとか、着るのがいやで、結局は無駄になるケースも多いでしょう。
「中央集権の最大の問題は、政府が日本中に同じ服を着せることだ」。政府の地方分権改革推進委員会の丹羽宇一郎委員長(伊藤忠商事会長)が先に日本記者クラブで行った講演での言葉です。「同じ服を着せる」とは、地域の都合とは関係なく国が決めた一律の基準によって施設づくりなどを進める意味です。そして「中央集権によっていかに全国で壮大な無駄をしていることか」と語りました。
無駄遣いの典型的な事例が、不要な街灯を自治体が設置し続けてきた問題です。明るさアップなど性能が向上したにもかかわらず、街灯の間隔などを定めた国の基準に沿って、過剰な施設整備が進められてきました。岡山県が管理する国道や県道の橋りょう部分などを例に山陽新聞が記事で指摘し、分権委でも取り上げられました。
自治体は無駄と分かっていても、補助金を受けるために国に従わざるを得ないのが常です。「くだらない補助金で地方をたぶらかしてはいけない。地方のニーズに応じた施設を造るべきだ」と丹羽氏は指弾しました。
地方の自主性に任せる方向で分権委は第一次勧告をまとめ、それを受けた政府方針が決まりました。しかし省庁などの抵抗は強く、勧告よりも大いに腰が引けた内容となり、分権改革に黄信号がともっています。
自分たちに合った服を着られるよう、改革を押し戻さねばなりません。
(東京支社・岡山一郎)