どこまで続くぬかるみぞ。こんなうんざり感がさらに強まった。年金問題である。
誰のものか分からない「宙に浮いた年金記録」、一切のデータが残っていない「消えた年金記録」の存在に驚いたのもつかの間、今度は入力ミスの記録が大量にあるという。
社会保険庁のコンピューター上の年金記録と、元になった紙台帳を照合するサンプル調査で、互いの情報が食い違うなど問題のある記録が厚生年金だけで推計約五百六十万件に上ることが分かった。対象者の年金受給に支障が生じそうだ。
政府は申し出があれば、即座に間違いを発見できる検索システムを開発して対応する。これまでも社保庁のデータ管理のずさんさが表面化する度に対策を講じてきたが、「まだほかにもあるのでは」と疑心暗鬼にならざるを得ない。
不信感が募る中、社保庁改革の一環で年金部門を引き継ぐ「日本年金機構」の基本計画案がまとまり、近く閣議決定される。社保庁は解体され、二〇一〇年一月から新組織に生まれ変わるが、正規職員の九割は社保庁からの移行組が占めることになりそうだ。釈然としない人が多いのではないか。
信頼を取り戻すには、早くぬかるみ状態を脱することだ。それができないようでは、新組織が発足しても「看板の掛け替え」といわれるだろう。