◎薬害肝炎で追加公表 心当たりの人はすぐ受診を
B型とC型の肝炎ウイルスが混入した恐れのある血液製剤を、止血などのため血友病以
外の患者に投与した可能性がある全国千八百二十五の医療機関名が厚生労働省から公表された。石川県では二十、富山県では十五の医療機関が含まれており、投与された心当たりのある人は保健所などで実施している検査を速やかに受けるのが望ましい。
血液の凝固因子の欠乏により出血しやすく、止血も困難な血友病患者のために、そうで
ない人の血液から血液凝固因子を取り出してつくったのが血液製剤である。
それが手術の際の出血を抑える目的などにも使われるようになり、肝炎ウイルスに感染
した人の血液が混じり、薬害肝炎の原因になった。感染に気付かず、治療を受けずにいると、肝硬変などに進む場合があるため、この機に検査を受けて感染の有無を確かめてほしいものである。
公表されたうち、非加熱製剤については二〇〇一年と今年一月にも医療機関名が公表さ
れている。今回の公表対象は非加熱と加熱のいずれかの第八、第九因子製剤を扱った医療機関であり、これまでの公表と重複しているが、新たに千百五十九施設が追加された。
追加分は加熱製剤でもウイルスの不活化処理が不十分とみられるものを投与した可能性
がある医療機関である。今では血液製剤は安全になったが、以前のそれは加熱製剤だったから感染リスクがないとはいえないのである。
加えて、これまでに血友病以外に投与されたことが確認されたのは全医療機関の約一割
に当たる百八十五施設で、患者数も延べで千七百二十七人にとどまっているため、あらためて広く受診を呼び掛ける必要があるとして一斉公表に踏み切ったものだ。
今回の公表には厚労省の調査に回答しなかったり、住所などが不明で調査できなかった
りした施設名も含まれている。
確認された感染者のうちわけは加熱製剤投与によるものが三百十一人、非加熱製剤によ
るものが千四百十六人となっているが、医療機関から本人に投与が告知されたのは四百十九人にすぎない。
◎「横田空域」一部返還 時間短縮へ全面開放を
米軍が管理する「横田空域」の一部返還に伴い、小松、能登、富山空港と羽田の飛行時
間が約三分短縮されることになった。おおよそ一時間のフライトからすれば、わずかな短縮かもしれないが、北陸と羽田を遮る巨大な「空の壁」が一部とはいえ、取り崩されることの意味は大きい。
今後、追加返還が進めば、首都圏の空路の過密状態が緩和されるため、羽田出発時の遅
れの改善も含め、さらなる時間短縮が実現する可能性もある。燃料高騰に苦しむ航空各社の節約にも役立つだろう。一部返還を横田空域全体の開放と管制業務の返還につなげる足掛かりとしたい。
横田空域は米軍横田基地が航空管制権を担い、羽田の西側の一都八県に及ぶ。北陸や西
日本へ向かう際の大きな障壁となり、これを乗り越えるために非効率な飛行ルートを強いられている。
九月二十五日に実現する一部返還は、在日米軍再編の一環として日米両政府が二〇〇六
年五月に合意した最終報告に盛り込まれた措置である。横田空域は高度約三千七百メートルから約七千メートルに階段状に設定されているが、今回は上部を削る形で全体の二割を返還する。低い高度で横田空域を通過できるため、飛行経路が短くなるわけだ。
最終報告には、横田空域返還に必要な条件の検討を二〇〇九年度に完了させることも盛
り込まれている。これらの合意を着実に前に進めなければならない。
横田空域は戦後、連合国軍が日本の航空管制を支配していた当時の名残ともいえる。日
米の安全保障上の問題があるとはいえ、首都圏近辺の航空管制権が今なお米軍に握られているのは異常な状況である。今後の羽田空港再拡張などを考えれば、上空はさらに過密化し、巨大な空の壁の存在は飛行の安全性にも影響しかねない。
北陸では新幹線が開業すれば、空港の羽田便減便は避けられないとの見通しもあり、各
県は空の利便性向上を目指し、飛行時間の短縮を国に働きかけている。横田空域の返還による首都圏空域の再編は、新幹線と空の便の競争の大きなかぎを握ることになろう。