フィリピンでのエビ養殖事業への投資話をかたった「ワールドオーシャンファーム」(WOF、破産)による組織的詐欺事件で、同社が集めた金は約2年間に全国約3万5千人から計約849億円にのぼることが警視庁などの合同捜査本部の調べでわかった。悪質商法事件の被害額としては過去6番目という。捜査本部は2日、会長の黒岩勇(いさむ)容疑者(59)=住所不定=に続き、同社幹部9人を組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑で逮捕した。
逮捕されたのは、営業部長山本敬次(74)=千葉市稲毛区あやめ台=、不動産部長三宅義人(43)=東京都品川区西大井=、経理部長平野博之(48)=千葉市稲毛区稲毛東=、ら各容疑者。ほかに、幹部や上級会員計8人を逮捕する方針だ。
調べでは、黒岩容疑者らはフィリピンでのエビ養殖事業で生じる利益を分配する意思がないのに、関連会社「ワールドオーシャン基金」の匿名組合契約による出資名目で、07年2月〜5月、30人から計1億1940万円を口座に振り込ませ、詐取した疑い。
WOFは05年夏ごろから、「フィリピンに東京ドーム450個分のエビ養殖場がある。出資すれば1年で2倍になる」と匿名組合員(出資者)を勧誘していた。
警視庁が調べた結果、WOFが契約していた養殖池は約65ヘクタールで、宣伝の30分の1程度しかなかった。エビ養殖事業に実態はなく、集めた金を配当に回す自転車操業を続けており、会社ぐるみの組織的詐欺に当たると判断した。
WOFは、郵便貯金6口座に約838億円、銀行口座3口座に約10億円を振り込ませていた。このうち、出資者に返還すべき被害額は約429億円という。米連邦捜査局(FBI)が凍結した4千万ドル(約48億円=07年当時)など以外にも多額の使途不明金があるといい、捜査本部は解明を急ぐ。