ニュース電子書籍端末売れず──ソニーと松下が事実上撤退松下とソニーが、専用端末を使った電子書籍から事実上撤退した。端末が高すぎたりコンテンツが少なすぎるといった問題が改善されないうちに、携帯電話向け電子書籍市場が成長。専用端末の“居場所”がなくなっていた。2008年07月01日 18時22分 更新
松下電器産業とソニーがそれぞれ、専用端末を使った電子書籍から事実上撤退することが分かった。ソニーは昨年、松下は今年3月までに端末生産を打ち切り、書籍ダウンロードサイトは今年度中に閉鎖する。一方、携帯電話向けの書籍配信サイトは継続する。 国内メーカーは2003年ごろから電子書籍市場に本格参入したが、専用端末やコンテンツの価格が高すぎたり、利用できる書籍数が少なすぎるといった問題が改善されず、普及が進まなかった。その間に携帯電話向け電子書籍市場が成長。専用端末の“居場所”がなくなっていた。 松下は、電子書籍専用モノクロ端末「ΣBook」を2004年に3万7900円で、カラー端末「Words Gear」を2006年に4万1790円(直販サイト価格)で発売したが、ΣBookは数千台程度、Words Gearは約2400台しか売れなかった。Words Gearは当初、初年度1万台程度の出荷を見込んでいたというが「専用端末の大きさや重さがユーザーに受け入れていただけなかったのだろう」と同社広報担当者は話す。 Words Gearの生産は今年3月に終了。両端末とPC向けの電子書籍ダウンロードサイト「ΣBook.jp」「最強☆読書生活(PC版)」も9月末に閉鎖する。携帯電話向けの「最強☆読書生活」は継続する。
ソニー「LIBRIe」
ソニーは米E Inkの電子ペーパーを採用した「LIBRIe」(リブリエ)を2004年に実売価格4万円前後で発売したが、「販売台数が伸びず黒字化できなかった」として07年5月に生産を終了した。PCとリブリエ向けに電子書籍を配信していた「Timebook Town」(100%子会社のタイムブックタウンが運営)も来年2月末に閉鎖する。 ソニーはLIBRIe発売時に、出版社などと共同で、電子書籍配信会社パブリッシングリンクを設立。LIBRIeとPC向け書籍に加え、携帯電話向け電子書籍も販売してきた。 「電子書籍市場は携帯電話にシフトしている」として07年、同社は携帯電話向け電子書籍専門に。PCとLIBRIe向け事業は「タイムブックタウン」に分社化していた。パブリッシングリンクは今後も携帯電話向けのコンテンツ開発に注力する。 電子書籍、ケータイが主流に 米国では専用端末売れる国内メーカーは5年も前から端末を発売していたにも関わらず、価格が高かったり、利用できる書籍の数が少ないといった問題が改善されなかった。その間に携帯電話の電子書籍市場が成長。「専用端末の“居場所”がなくなった」(ソニーの広報担当者) 松下、ソニーとも、携帯電話向けの書籍配信サービスは継続するとしており、専用端末は携帯にその座を奪われたということになりそうだ。
Amazon.com「Kindle」
日本の状況とは対照的に、米国で昨年、Amazon.comが発売した電子書籍端末「Kindle」(339ドル)は発売から5時間半で売り切れる人気となった。 KindleはE Inkの電子ペーパーを採用するなど、技術や大まかなデザインはLIBRIeとそれほど変わらない。だが9万冊以上と数多くの書籍、雑誌、新聞などを、EV-DOネットワーク経由で直接ダウンロードできるという利便性が受けたようだ(“iPodっぽい”クールさも 米Amazonの電子書籍端末「Kindle」を触ってきた)。 E Inkのスタッフは、「取り次ぎが絡む複雑な流通体系もあり、日本の出版社などが電子書籍向けにコンテンツを開放しない」と話していた。日本でKindleと同様のビジネスモデルを採るのは難しそう。日本の電子書籍専門端末は、このまま死滅してしまうのだろうか―― 関連記事
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