国立・私立(附属中学内部進学受験)の専門塾   のがも学園

ある国立大付属中でのレポートの課題について

「内部入試対策の専門塾について」より続く。


  ある国立大付属中で、
  「母線の長さが10cmの円錐について、体積が最大になる条件を求めよ。」
  という趣旨のレポートの課題が出されたことがありました。
  その生徒が中1の終わり頃のことです。

  そこで、 のがも学園 では、次のような方針でレポートを書くように、
  指導しました。

  実は、ここでも中3で習う「三平方の定理」を用いています。
  しかし、「三平方の定理」は「ピタゴラスの定理」という別名で、
  小学生向けと思われる学習図鑑などにも取り上げられることが多く、
  中1生が「たまたま知っていた」としても不自然ではないと
  思われます。

  のがも学園 では、内部入試突破のために必要な配慮をした上での、
  提出物指導も実施しています。


高さが  、底面の半径が  の円錐の体積を  とすると、
      V=1/3π(r^2)h  となります。 ……[1]
円すいの見取図

このとき、円錐の展開図を考え、母線の長さを  、
側面の中心角を x 度とします。
 本当は、側面の中心角を θ とおいた方が見栄えはいいのでしょうが、
 かえって露骨なので、あえて x にしました。
円すいの展開図

底面の円周の長さと側面の弧の長さは等しいことから、
      2πr=2πL*(x/360)
ゆえに、  r=L*(x/360)  となります。
ここで、今回は、母線の長さが10cmですので、L=10を代入して、
      r=(1/36)*x  となります。 ……[2]

また、円錐を横から見た形を半分に切ると、
3辺の長さが  と  と  の直角三角形になります。
円すいの正面図
ゆえに、「三平方の定理」より、 2=h2+r2 となり、

ここで、円錐になるための条件として、 L>r ですから、

     2=L2−r2 ……[3]

さらに、 L=10 ですから、 h=(100−r^2)^(1/2)  となります。

これを [1] に代入して、
      V=1/3π(r^2)*(100−r^2)^(1/2)
これに [2] を代入して、
      V=1/3π{(x^2)/1296}*{100−(x^2)/1296}^(1/2)  となります。 ……[4]

この時点で、 のがも学園 の講師の側で、後述の 微分を用いた解き方
  が最大となるような x の値を計算し、
その値 を教えておくことで、その生徒の計算ミスの危険に備えた上で、
次のような方向でレポートを作成するように指導しました。

まず、 x が0度と360度の場合には円錐にならないので、
かわりに、 x が1度と359度の場合について、 [4] に代入して
 を(計算機で)計算します。

すると、
     x =1  の場合、V≒0.0080761
     x =359 の場合、V≒77.527223
となります。

 本当は、  [4] に  x =0 や x =360 を代入しても、 V=0 になるだけですが、
 ここでは円錐にならない数値をあえて避けました。

そして、30度から330度までについて、30度おきに計算します。
     x =30  の場合、V≒7.2432366
     x =60  の場合、V≒28.667424
     x =90  の場合、V≒63.339415
     x =120 の場合、V≒109.64520
     x =150 の場合、V≒165.18787
     x =180 の場合、V≒226.60998
     x =210 の場合、V≒289.28275
     x =240 の場合、V≒346.72857
     x =270 の場合、V≒389.42152
     x =300 の場合、V≒401.78248
     x =330 の場合、V≒351.49078

今まで計算した中で、  が最も大きくなるような
x の角度は300度で、2番目は270度でした。
そこで次は、念のために前後に幅を持たせて、
240度から330度の間について、10度おきに計算します。
     x =240 の場合、V≒346.72857 (前出)
     x =250 の場合、V≒363.19693
     x =260 の場合、V≒377.60995
     x =270 の場合、V≒389.42152 (前出)
     x =280 の場合、V≒397.97147
     x =290 の場合、V≒402.44134
     x =300 の場合、V≒401.78248 (前出)
     x =310 の場合、V≒394.59055
     x =320 の場合、V≒378.86571
     x =330 の場合、V≒351.49078 (前出)

次は、280度から310度の間について、5度おきに計算します。
     x =280 の場合、V≒397.97147 (前出)
     x =285 の場合、V≒400.77544
     x =290 の場合、V≒402.44134 (前出)
     x =295 の場合、V≒402.83041
     x =300 の場合、V≒401.78248 (前出)
     x =305 の場合、V≒399.11012
     x =310 の場合、V≒394.59055 (前出)

次は、285度から300度の間について、1度おきに計算します。
     x =285 の場合、V≒400.77544 (前出)
     x =286 の場合、V≒401.20384
     x =287 の場合、V≒401.58571
     x =288 の場合、V≒401.92000
     x =289 の場合、V≒402.20559
     x =290 の場合、V≒402.44134 (前出)
     x =291 の場合、V≒402.62609
     x =292 の場合、V≒402.75862
     x =293 の場合、V≒402.83771
     x =294 の場合、V≒402.86208
     x =295 の場合、V≒402.83041 (前出)
     x =296 の場合、V≒402.74135
     x =297 の場合、V≒402.59349
     x =298 の場合、V≒402.38540
     x =299 の場合、V≒402.11557
     x =300 の場合、V≒401.78248 (前出)

今まで計算した中で、  が最も大きくなるような
x の角度は294度で、2番目は293度、3番目は295度です。
ここで、293度のときと、295度のときとで、  の値が近いので、
  が最大となる x の値は、かなり294度に近いものと推測できます。

以上より、 「母線の長さが10cmの円錐について、体積が最大になるのは、
円錐の展開図の側面の中心角が約294度の場合である。」
と、結論づけても良いでしょう。



なお、ここでは念のために、294度付近について、
0.1度おきに計算しておきます。
     x =293.8 の場合、V≒402.86165
     x =293.9 の場合、V≒402.86215
     x =294  の場合、V≒402.86208 (前出)
     x =294.1 の場合、V≒402.86146
ここまで計算すると、 「円錐の展開図の側面の中心角が
約293.9度の場合である。」
と推論することができます。

さらに、0.01度おきに計算した場合には、
     x =293.92 の場合、V≒402.862177980420
     x =293.93 の場合、V≒402.862185683357
     x =293.94 の場合、V≒402.862187792153
     x =293.95 の場合、V≒402.862184305477
となり、 「円錐の展開図の側面の中心角が
約293.94度の場合である。」
と推論することができます。

 なお、ここでは、円周率 π を3.14として計算しましています。
 ですが、別の値、例えば π=3.141592 で計算しても、
 の値は π に比例して変化しますが、
 が最大となる x の値は変化しません。


  以上のような方向でレポートを作成するように指導しました。
  結果的に、その生徒のレポートは、最高の評価を受けたそうです。


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  [補足] 3次関数の微分を用いた解き方

  ※ 注意
  以下の解法は、確かに、数学的には、正しい解き方ですが、
  国立の学校の場合、まだ授業で教えていない方法を用いても、
  良い評価を得られない危険があります。
  特に、3次関数の微分は、「三平方の定理」の場合と異なり、
  中学1年生が「たまたま知っていた」というのも不自然でしょうから、
  そうした危険が大きくなります。


この円錐について、
      2=L2−r2 …… [3] (前述)
また、円錐になるための条件として、L>hですから、
      r=(l^2−h^2)^(1/2)
さらに、 L=10 ですから、
      r=(100−h^2)^(1/2)  ……[5]
これを、
      V=1/3π(r^2)h  ……[1] (前述)
に代入して、
      V=1/3π(100−h^2)h
これを変形させて、
      V=−π*(h^3)/3+100πh/3  ……[6]
ここで、hについての3次関数
      f(h)=−1/3π*(h^3)+100/3πh  ……[7]
について、  で微分して、
      f'(h)=−π*(h^2)+100/3π=−π*[h−10/{3^(1/2)}]*[h+10/{3^(1/2)}]
 ゆえに、 f'(h)=0  となるのは、  h=±[10/{3^(1/2)}]
つまり、 h=±[10/3*{3^(1/2)}]  のときです。……[8]
このときに、 V=f(h)  [7]  は、極大もしくは極小となります。

 は、母線の長さ()が10cmの円錐の高さなので、 0<h<10 です。

つまり  の変域が 0<h<10 ですので、これと [8] より、
h=10*{3^(1/2)}/3  のとき、  は最大となります。……[9]

V=f(h)のグラフ

このときの  x  の角度を求めるのならば、
h=10/3*{3^(1/2)}  を、  [5]  つまり  r=(100−h^2)^(1/2)  に代入し、
      r=(100−100/3)^(1/2)
ゆえに、  r=10*6^(1/2)/3  ……[10]
また、   r=(1/36)*x  ……[2] (前述)
より、   x=36*r  ですので、
これに、先ほどの  [10]  つまり  r=10*6^(1/2)/3  を代入し、
      x=36*10*6^(1/2)/3
ゆえに、  x=120*6^(1/2)≒293.938769…  となります。

ちなみに、  の最大値は、
[9]  より  h=10*{3^(1/2)}/3  を、
[6]  つまり  V=−π*(h^3)/3+100πh/3  に代入して、
      V=2000*{3^(1/2)}/27*π  です。

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