大阪市北区の医科歯科系大学受験専門予備校「メディカルゲイト」の経営者(55)らの仲介で、川崎医科大学(岡山県倉敷市)の川崎誠治副学長が06年9月、推薦入試を受験予定の男子受験生の母親と大学で面会していたことが分かった。予備校経営者は、母親に自分名義の口座に4500万円を振り込ませていた。大学関係者が合格発表前に受験生の保護者と接触することは裏口入学につながりかねないとして、文部科学省が事務次官通知で禁じている。受験生は不合格となったが、同省は調査を始めた。
母親らによると、母親は予備校経営者から、06年7月、「医学部にルートがある」と持ちかけられ、同年9月、川崎副学長と大学内で面会。川崎医大の関連大で客員教授を務めた長野祐也(すけなり)・元衆院議員(68)も同席した。母親は「息子が推薦入試を受けるのでよろしくお願いします」と依頼し、川崎副学長は「受験番号が決まったら連絡を下さい」と直通電話番号を伝えた。
母親はこの間、同年8月と11月の2回にわたって計4500万円を予備校経営者の口座に振り込んだ。金の一部は長野氏にも渡ったという。
副学長は取材に対し「長野氏から面会を頼まれ、断れなかった。受験番号を聞かせてもらい、合否を伝えるために直通電話番号を教えた。疑惑を招く行為で慎むべきだった。特別扱いはしなかった」と話している。
結局、受験生は06年11月の推薦入試で不合格となり、予備校経営者は07年5月、1000万円を返却した。経営者は、大学関係者と会わせるために資金を受け取ったことを認めた上で、「受験生が入試に失敗し、母親の弁護士から返還するよう求められたので1000万円を返した。(残る)3500万円は(仲介役をした知人に)渡した」と説明。この知人は「(さまざまな)人に会わせる資金に使った」と話す。
また、長野氏は、仲介にかかわった元秘書から200万円を受け取ったことを認め、「母親の気持ちを大学側に直接伝えたいという好意で仲介した。事前に紹介することが不正になるかはコメントできない。使う必要がなくなったので、金は返した」と話している。長野氏は、毎日新聞の取材を受けた後の今年6月、関連大学の客員教授を辞職している。【日野行介】
毎日新聞 2008年7月2日 15時00分(最終更新 7月2日 15時00分)