J.A.Y. Greyhoundの今後について |
日本でGreyhound(以下、GH)の発展を考えた場合、沢山の問題点があります。
GHはGHの適した飼育をすれば最も楽しめる犬種ですが、反面GHに適さない飼育をすると厄介な犬種です。
私もGHの性格の認識を誤り人々に間違った説明をしていた点は反省しています。
以前、某雑誌にも執筆しましたがGHの性格は他の大型サイトハウンド(以下SH)とは明らかに異なります。
GHはSHの性格では無く一般の犬に近く、他の大型のSHに比べると無駄吠えも有り凄くパワフルです。
運動場(最低15坪)が無い家庭&小さい子供のいる家庭では絶対お勧めできません。
少なくともパピーから最低6ヶ月は犬舎飼いをするのが望ましく、人間と共の生活は避けるべきでGHには犬である意識を認識さすのが重要です。
私のところではパピー時より全て犬舎飼育なので、GHを室内で飼育し成長したときの性格は解りませんでした。
しかし、パピー時から室内につながる運動場の無い室内飼育のGHを見ていると、人間の方が主導権を握れなくなる事が多いようです。
GHは決められた長さを全力で駆け抜けるのに必要な爆発的な集中力を持っていますが、このテンションの高い性格が災いします。(しかし、ある意味この単純な集中力とテンションが高い性格であるが故にSHの中で最も訓練性能が高い)
簡単に言えば近頃良く言われる”切れる" と言うものが悪気が無く出てしまいます。
パピー時より人間並みに扱い、共に生活をし、甘やかし、一緒に就寝などをして育てた個体は寝ている時に、不意に体などが触れた時にこの”切れる”と言う行動が出て、唸って文句を言ったり、時には歯を当てる事もあります。又、 GHが好まないことを強要した時などもこの行動が出てしまいます。
基本的に室内で飼育している欧米のショーGHのブリーダーでも就寝時は別にしています。
又、GHは大型種故に飼い主や家族がGHの切れた状態に少しでも怯んでしまえば、GHはより付け上り間違った学習をします。
以前他人が触れなく機嫌が悪そうなGHを見かけた時、この様な個体は性格遺伝が高いと思っていましたが、血統から来る遺伝的要素よりもGHの性格&飼育上から来ているのが原因でしょう。
そして、GHを飼育して想像と違った場合、自分の飼育は良いがブリーダーやその個体が悪いと間違った考えになりがちです。
この様な"切れる"行動について海外のブリーダーに質問したところ、「これがGHの性格だから」と淡々と言われました。
海外は犬への接し方&考え方が日本人とは全く違います。海外ではさほど問題が無く、これはこれでGHの性格として認識をし、飼育が出来きるので問題無いですが、日本人は犬を躾けるのが上手い人種ではありませんしどちらかと言えば間違った考えを肯定してしまい、飼育してしまうのでGHの性格をどこまで理解できるのかが疑問です。
日本のSH愛好家がSHに望む性格とGHの性格とでは余りにもかけ離れています。
GH をSHの基準で考えてその様な認識からGHの飼育、またその延長線上にある、安易に自分の仔を見たいと言うアマチュア感覚でブリーディングでGHの性格を考えず譲渡した場合、GH=危険と言うレッテルを貼られるかもしれません。
よくリタイアGHレーサーが飼い易いと言うのはパピー時から犬舎飼いをして犬を認識指し、また必要でない経験をさせて無く、運動に対してのストレスが無いからでしょう。
2歳を越えた輸入犬などもGHの性格を考え飼育された後の輸入なので、リタイアレーサーの様に全く問題はありません。
私のGH達もある意味レーサーと同じように犬舎飼いなのでこのような”切れる”と言う行動は全く出ません。GHを飼育していく上でGHの為の環境作りは最も重要なのでしょう。
そしてもう1つGHを考えていく上で大きな問題点があります。
ショーGHのブリーダーは一般的な大型SHと比較すると数が少なく、又、優れたスタンダードに合致したGHを作る上での血統の配合もある程度限られています。
現在、日本に入っている輸入犬にはイギリス、スカンジナビア、ヨーロッパ&アメリカなどから様々なTopの血液を持ったGHが来日しています。
そして、これらのGHのラインにはリバーシャント、筋ジストロフィー&心臓病などの疾患が出ています。
事実、私共が輸入をお手伝いしたGHのパピー2頭もリバーシャントが生まれました。
J.A.Y.ブリーディングのGH達も悲しいかな血統を遡ればこれらのラインが入っています。
もしも私がGHに興味を持ちブリーディングをと考えた時に、GHは問題があるのが解っていればGHは諦めていたでしょう。
日本の獣医の見解から見ると100%遺伝からと決めてしまいがちですが、欧米のブリーダーはこれらを遺伝からだけと決め付けてなく個体&タイプと血統&タイプとの配合から来る方が高いものだと考えているようです。
ある有名な海外のGHのブリーダーがいます。そして彼は獣医で大学の獣医科で研究の仕事をしており、彼のブリーディングした複数のトップクオリティーのGHの主流ラインのパピーの中からもこれらの疾患が出ています。
しかし、彼はこの主流のラインを排除するのではなく、尚且つこのラインのラインブリーディングを行っています。
私は'05・11月〜12月これらの質問を複数の海外のブリーダーにしました。
そしてブリーダーたちは私に言いました。「GHにこの様な問題が有るのはトップのブリーダーは承知している。しかしGHはまだまだ血統のバックグラウンドは狭く、5代祖まで遡れば90%以上の血統書上にこれらどこかのラインに行き着くであろう。
これらのラインを全て排除をしてしまえばスタンダードから見たショーGHのクオリティーを維持出来ないかもしれない。
元来広がりが少ないGH、たしかにこれらをオープンにするのも必要かもしれない、しかしその反面間違った認識で絶対数が少ないGHの発展に支障になる可能性の方が高いかも知れない。
そして、ショーGHのブリーダーの殆どが排除よりも乗り越える道を選択した。
世界のGHを考えればまだまだ完成度ではもう少し世代が必要なのかもしれない。
そもそもブリーディングに100%安全と言う事はない、仮に5代祖を遡って良いもの同士を配合しても何かの引き金で問題が出る事がある、これがブリーディングであり、ブリーディングは品種改良である、品種改良を行う上では進む事もあれば戻る事もある。
ブリーダーとしての知識、経験&技術があれば色々な問題を乗り越えたり、封じ込める事も出来る。
そして、この様な問題に立ち向かえないのであればブリーダーに成る資格が無い。
現在のGH界ではオープンにするよりも知識、技術&経験による前向きな向上心がより重要視されている。
最後に内面的よりも遺伝の重要性を先に考えれるよりも、外見上から来る弊害をもっと考えるべきである。
例えば最低限の肩の角度が無かったり、体の幅が無かったり、前肢のエルボーや後肢のホックが内転していたり、重心が高すぎたり、浅い胸&極度のサイズオーバーなどこの様な個体をブリーディングに使うのはGHの将来の危険度ではこちらの方が遥かに高く、まだまだGHの認識は間違っている事が多い。
あなたもクオリティの高いGHを作出出来る一員なのだからもしも今後、日本でGHのブリーディングが増えるようであればあなたの経験や知識を伝えるべきである」と言われました。
J.A.Y.では世界の主流のGHの血統を研究し、タイプと血統から来るブリーディング、してはならない配合など殆ど解っているので健全性のあるGHを作出する事は難しくはありません。
しかし日本には今後私が望むGHを作出する上で組み込みたいタイプ&血統を持っているオスは1頭しか居ません。
以前はもう少し日本でもGH人気がでる様にとも考えましたがGHの性格、飼育の方法&ブリーディングの難しさを考えると今は日本でGHが増えてしまうのは良い結果が齎さないような気がします。
日本では本から得た知識や学者的な考えだけで"いつの間にか先生"になり疾患についてインブリーディングが原因と決め付ける方が居られますが、品種固定する上ではインブリーディング、アウトブリーディング&ラインブリーディングと色々用いて作っていきます。
現存する犬種でラインorインブリードをせずに固定された犬種は存在しないでしょう。
GHはまだまだこれらも用いてその隙間を縫って作らなければ成りません。
GHをはじめ純血種は少なからずともこれらのリスクはあります。
100%疾患の無い血統の組み合わせだけで作られているケネルはまず存在しないでしょう。
どんなに注意をしても5代祖よりも前の遺伝が血統の組み合わせによりリンクして,
単発的にその1胎にだけでてくる場合があります。
もしも病的にこれらを嫌うのであれば純血種の飼育を諦める方が良いかもしれません。
(最もMixだからと言って100%安全とは言えませんが)
今、幸いにも私の所には私が思い浮かべるGHを作出するのが可能な、J.A.Y.ブリーディングのメスを2頭所有しています。
そして、もしこの2頭のメスを得ていなければ多分GHのブリーディングは止めているでしょう。
J.A.Y.のGHのブリーディングの今後は自分と信用できる友人&輸出用しか行いませんが、私共がブリーディングをしたGHでもよく、私共の提示する条件(避妊&去勢、飼育の環境等)をクリア出来る方はご一報下さい。
今秋中に前出のメスの2頭のうち1頭をこれからの血統の幅を広げる交配のためにアメリカに送る予定をしています。
日本や海外の雑誌にGHについてインタビューを受け、レポート&コメントを執筆している私がGHの短所と取れる部分を強調してしまうのはGHの愛好家から非難を浴びるかもしれません。
しかし、間違った認識でGHを飼育&ブリーディングをしてしまえばGHの将来に悪影響を及ばす恐れがあるので、あえて書かせていただきました。