妊婦健診を1度も受けないまま駆け込んでくる「飛び込み出産」を2005年から3年間で産科施設の半数が経験し、4割以上が以前より増えたと感じていることが、日本産婦人科医会岡山県支部(丹羽国泰会長)の調査で分かった。「未婚」のケースが半数を占め、背景には周囲に相談できなかったり、経済的事情などさまざまな問題がうかがえる。
今年3月、分娩(ぶんべん)を扱う県内43施設にアンケートし、32施設から回答があった。
この結果、飛び込み出産は05年―07年で、16施設が70件経験。数年前に比べ「増えた」と答えた施設は44%に上った。
背景(複数回答)は「未婚」が51・4%を占め、次いで「親子手帳(母子健康手帳)なし」28・6%、「3人目以上の経産婦」20・0%、「未成年」18・6%など。施設が妊婦から受けた説明では「未婚で隠したかった」「中絶の時期を逸した」「お金がなかった」などの理由があったという。
地域別では、産科施設の少ない県北6件に対し、県南が64件。分娩数(1000件)に対する比率でも県南が県北の約5倍と高かった。
妊婦健診は初回が約1万3000円(2回目以降約6500円)で、厚生労働省は最低5回の受診が必要としている。
飛び込み出産は妊婦の経過などを把握しきれないため、妊娠高血圧などの合併症、胎児の死亡といった医療安全面でリスクは高い。07年は9施設(29件)が経験したが、7件についてはこうした危険性、費用の未払いへの懸念から受け入れを拒否した。
同支部は各施設に個別事例ごとの調査・報告を求め、飛び込み出産に至る背景を探る。
調査を担当した中塚幹也岡山大大学院教授は「個人のモラルや経済的な問題のみでは片づけられない。妊婦健診の無料化だけでは限界があり、個々の事例を検証した上での対策が求められる」と話している。