2006年12月16日
香川雄介の走りを検証する(2006.12.16前橋F1二日目9レース)
審判辞めちまえ!と場内が大騒ぎになった
2006年12月16日の前橋F1二日目9レース。
ここでは審議対象と「ならなかった」香川雄介が
本当に審議対象とならなかったことが妥当であったかどうかを
順を追って検証してみることにする。
まずは4・馬場喜泰(青)がレースを引っ張る。
4番手で9・松山勝久(紫)と6・松本大地(緑)が併走状態となるが
馬場の先行ピッチが上がらないことからか松山は馬場が空けたインを突いて
馬場ラインに切り込んで行き活路を見出す。
回りの動きに立ち遅れた松本大地(緑)がアウトに浮いたのを見て
番手の島田竜二(黒)はすぐさま松本を捨てて前へ前へと追い上げていく。
その動きにしっかりと付いて行く香川雄介(黄)。
必死に追い上げた島田竜二だったが残念ながら2角で力尽きて終了。
すぐさま香川は島田を捨てて空いたコースをすり抜けて上昇していく。
ここで松山勝久(紫)は併走状態となった森木健二(ピンク)をやっつけるために
外帯線を外して森木を押し上げていることに注目。
この映像を見ると香川雄介は
一見「内側追い抜きで失格」になりそうに見えるのだが
直前に松山が自ら外帯線を踏み切って走行したところに
香川がすかさず前輪を差し込んでいたためルール上は「セーフ」。
そこをすかさず西郷剛(白)が自力に転じて捲って出る!
それを松岡がブロックして見事に止めることに成功。
しかし、空いたインを香川が…
ここでは西郷ドンの捲りに併せて車を振ってしまった馬場喜泰(青)が
見事に外帯線を外して走行していることに注目。
慌てて馬場はインを締めるが間に合わず
馬場が外帯線を外している時に香川が内に前輪を差し込んでいたため
これで走路は無事に香川雄介の「有権走路」に…。
こんな映像を見ると確かに香川が
「えげつない内抜き」をしているようにも見えるのだが
ここまで内に入って走行しているのは馬場の押圧を避けるため。
迷うことなく空いた内をすり抜けた香川雄介は見事な(?)「イン捲り」で快勝。
そんな訳でこのレースは厳密に言うと
「香川を審議対象にしなかった審判員が正しい」ということになるのだが
一般のファンはそんなルールの細かいところまではさすがに知る訳もない。
今回はたまたま前橋競輪側が騒ぎを重く見て
「審議しなかったことへの説明」を行ったが
実際のところはそれがあっても騒いでいたほとんどの客は
状況を理解することができずに
「競輪なんてやーめた!」
と競輪場を去って行ってしまったようである。
今回の事案は客側に
「もっと詳しい状況説明」ができていれば…と悔やまれるところ。
前橋競輪側もこれを期に「わかりにくそうなプレーは必ず説明を入れる」
などの工夫をすることが必要だろう。
競走をしている選手や審判は
ルールの細かいところまで熟知しているはずだが
客の側にはヘビーなファンから競輪を始めたばかりのライトなファンまで
さまざまなファンがいて
ルールを熟知している人などはほんの一握りに過ぎないのである。
すべての人達が納得できる競輪。
それがこれからの競輪界が目指すべき姿ではないだろうか?
今回の事件はギャンブルにありがちな
「車券が外れたことに対する腹いせ」に端を発した騒ぎではなかった。
騒いだ人達が口々に叫んだ言葉は「公正競輪を求める声」ばかり。
みんな「競輪が大好きだからこそ」
今回のことがこれだけ大きな騒ぎになったことは間違いないのである。
いつもは100円玉でチマチマと車券を買っているだけのファンも
この時ばかりは競輪を愛するがゆえに声を大にして抗議の声を上げた。
いつもはおとなしい前橋のファンにも
そうした熱い気持ちがしっかりと心の奥に脈打っていたのである。
競輪を愛するが故の抗議。
内容的に決して「負の事件」ではなかった今回の事件が
私のホームである前橋競輪場であったということを
私は少し誇らしく思いながら家路に就いたのであった。