食料品などの値上げラッシュが始まった。原油や穀物価格の高騰が大きな原因だが、便乗値上げや談合による価格操作が起きる恐れもある。監督当局は警戒を強め、しっかり目を光らせるべきだ。
魚肉ハムやソーセージ、キャンディー、ビスケット、食用油、ちくわなど練り製品。春先から始まった値上げの動きが七月に入っても、止まらない。むしろ加速したような感じさえある。
ガソリン価格は、ついに一リットル当たり百八十円台に突入した。いずれも日常生活に密着した商品ばかりで、家計、消費者の財布には打撃が大きい。
背景にあるのは原油と穀物価格の高騰だ。直撃を受けた国際航空運賃は燃料代上乗せ分が片道最大八千円に上る。消費者物価は日本だけでなく、アジアや欧州でも上昇し米国も高止まりしている。
こうなると、消費者は少しでも安い品を選んで自衛するしかないが、公正取引委員会をはじめ監督当局には監視の目を光らせてほしい。過去には、こういう値上げラッシュの時期を選んで「この際、うちも」と、便乗を図る動きが目立った例もあるからだ。
値上げは、単独ではやりにくい。消費者の目が届きにくいところで、不正な談合をしているようなことはないか。当局は不審な情報があれば、すかさず行動して、公正な市場競争による価格決定の透明性を高めるべきだ。
日銀が発表した六月の企業短期経済観測調査(短観)によれば、景気の減速傾向は一段と鮮明になっている。大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス五と前回調査から六ポイント悪化した。三カ月後の先行きについても、プラス四と一段の下落を見込んでいる。
物価上昇は消費者心理を冷やす。それもまた景気にマイナスだ。物価が上がる一方、景気が冷える。そんな傾向が加速すれば「インフレ下の景気後退」という政策当局にとっては、難しい事態にもなりかねない。ここは厳重警戒が必要な局面である。
値上げラッシュといっても、日本の消費者物価は生鮮食品を除く総合指数で五月は前年同月比1・5%の上昇にとどまっている。いまのところ、過度にインフレを心配するには及ばない。
日銀は景気腰折れに大きな注意を払うべきだ。政府はこれから来年度予算編成に向けた概算要求基準のとりまとめを迎える。財政状況は厳しいが、景気にも慎重な目配りが求められそうだ。
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