[米競泳]ハンセンは世界新ならず　ＬＲ着用

　【オマハ（米ネブラスカ州）堤浩一郎】競泳の北京五輪米国代表選考会は第２日の６月３０日、当地で男女３種目の決勝が行われ、男子百メートル平泳ぎにブレンダン・ハンセンが出場。英スピード社製水着レーザー・レーサー（ＬＲ）を着用して勝ったが、自らの世界記録５９秒１３の更新はならなかった。

　女子百メートル背泳ぎ予選では、ヘイリー・マグレゴリーがいったん、０４年アテネ五輪金メダルのナタリー・コーグリンが持つ世界記録を０秒０６更新する５９秒１５をマーク。しかし、次組で泳いだコーグリンが５９秒０３で、再更新した。ともにＬＲを着用した。

　◇手痛い「失速」

　北京五輪の男子平泳ぎで２大会連続２冠を狙う北島康介（日本コカ・コーラ）の最大のライバルとなるハンセン。そのハンセンが、百メートルで手痛い「失速」を見せた。

　レース直後、虚空を見つめたハンセン。「がっかりした」と漏らした。前日の準決勝は、今季世界ランク１位で自身の世界記録に０秒１１と迫る５９秒２４をマークした。勢いに乗って臨んだはずの決勝だった。

　だが、序盤から泳ぎが硬く、５０メートルのターンは準決勝より０秒２７遅れた。後半もスピードが乗らず、最終タイムは予選（５９秒８４）さえ下回る結果に。北島が６月のジャパンオープンで出した日本記録の５９秒４４にも、後れを取るタイムとなった。

　エディ・リーゼ・コーチは「腕のかきが強過ぎることがある。テンポを考えないといけない。リズムがキーだ」と語っていた。そのリズムを狂わせた原因を、ハンセンは「五輪代表を確定させたくて、緊張した」と話した。

　北島を指導する平井伯昌コーチは常々、「勝負になれば、康介が上」と、ハンセンの精神面の弱さを指摘する。直接対決を前に、図らずも弱点を露呈したレースとなった。ジャパンオープンの二百メートルでは、北島がハンセンの世界記録を更新している。残る二百メートルで、ハンセンが立て直せるか。その結果次第では、北京での勝負の行方も見えてくる。【堤浩一郎】

　○…ＬＲによる記録ラッシュが猛威を振るったのは、女子百メートル背泳ぎ。予選で新鋭のマグレゴリーが世界新記録を樹立したものの、数分後には前記録保持者のコーグリンがその座を奪い返した。「もっと楽に泳ぐつもりでいたが、（マグレゴリーの記録更新が）モチベーションを与えてくれた」とコーグリン。マグレゴリーは、報道陣の取材エリアに姿を見せた時には、既に前記録保持者になっていた。準決勝はともにタイムを落としたが、１日の決勝では５８秒台に突入する可能性もある。北京五輪でメダルを狙う中村礼子（東京ＳＣ）、伊藤華英（セントラルスポーツ）の日本勢にとって、ハードルはより高くなりそうだ。