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■ ■ ■ ■ ペットビジネスの転ばぬさきの杖
■■■■ ■■■■ ■ メールマガジン 2003/06/27
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■ ■■■■ ■ 「ペットビジネス専科」 7号
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「ペットビジネス専科」はペットビジネス相談室で、日頃相談事例の多いテー
マを順次取り上げていきます。
1号から10号までは子犬の繁殖がテーマです。
日本畜犬学会を窓口とし、多くの団体、専門家のご協力を得て刊行されます。
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テーマ「職業としてのブリーダー」
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(問い)
すぐにではありませんが、会社を退職して故郷に戻り、子犬の繁殖で生計を立
てたいと考えています。
具体的に何から準備を始めれば良いでしょうか?
繁殖場を作る際の注意なども聞かせてください。
又、何頭くらい繁殖すれば、生活の維持が可能でしょうか?
(東京都・K)
(答え)
現段階では相談者が子犬繁殖事業に充分な技術と知識を持っているとは考えら
れませんから、まず可能な手順で「子犬の繁殖」についての知識や流通につい
ての情報を収集すべきだと思います。
さらに事業として繁殖を始める前に、実際に自分で犬を育て、出産に立ち会っ
て見ることは必須です。
都市部のペットショップを見て回り、人気犬種や価格動向も知るべきです。
犬の卸売り市場も「業者名」で登録すれば入会可能なところもありますから、
定期的に通うことで季節による価格の変動や、業者としての犬の良し悪しの判
断基準を学ぶことが出来ます。
ペット販売業者向けの「子犬卸し情報」が刊行されていますから受信すること
で、我が国の子犬流通の現状を知ることも出来ます。
少なくとも一般常識のレベルを超えた子犬流通に関する実体験をつんだ上で、
最終的に参入の判断をすることをおすすめします。
子犬の繁殖事業への新規参入にあたり、注意すべき点をいくつか述べます。
■人に頼らないこと。
何かと不安がありますから、経験者の意見に耳を傾けることは良いことですが、
繁殖犬の導入や出産子犬の出荷について、人まかせで参入することは、問題が
あるのは前の号で述べた通りです。
■看板をあげない。
よほど恵まれた環境でない限り、繁殖は近隣に音や臭気などで迷惑をかける事
業です。
「愛犬家」としてなら許されるレベルであっても、「商売」となると近隣の見
方は大きく変わります。
この事を考慮して業界人は、繁殖者を訪ねる時に業者と判るような車では行か
ないものです。
少なくとも犬の繁殖者が「看板」をあげる事で得をする事は何もありません。
■外から見えない犬舎を作る。
外から見える犬舎は、犬から外が見える訳ですから、騒音がより大きくなりま
す。
あまり考えたくありませんが、近隣との関係が悪化すると毒物の投入なんてこ
とも昔はありました。
動物愛護団体から1頭当たりの専有面積うんぬんの抗議を受けるケースもあり
ました。
■入る時は要注意。
繁殖場にとっての致命的な損害は伝染病や皮膚病、寄生虫などが侵入すること
です。これらは外部から犬が繁殖場に入る時に持ち込まれます。
安定の域に達した繁殖場では、子犬が出て行くばかりですから事故は少ないの
ですが、開業初期の台犬導入時はきわめて危険な状態にあります。
繁殖場には隔離室を必ず作ります。
病気の犬を見分ける事は誰にとっても困難ですが、繁殖場を伝染病から守る方
法が一つだけあります。
それは「すべての犬が病気」と決めつけることです。
繁殖場に入る犬はすべて一定期間隔離(病気扱い)します。
その時期に疑われる伝染病の潜伏期間を過ぎて健康なものだけを繁殖犬舎に移
します。
伝染病は人によっても運ばれます。
繁殖場は他人(特に動物関係者)を敷地内に入れるべきではありません。
逆に繁殖者は他の繁殖場を訪ねた場合でも敷地内に入るべきではありません。
やむを得ず入る場合でも、靴底の消毒など防疫対策は必須です。
■太陽は最強の消毒薬。
太陽の消毒、殺菌力は強いものです。
犬舎設計の段階から日光消毒に適した構造(例えば屋根が開く)を考えます。
繁殖場に於ける運動場と言うのは、運動のためだけではなく日光浴のできる場
所と考えるべきです。
■金網越しの交雑もあり得る。
繁殖場のまわりには必然的に野犬が集まります。
その時期には塀を乗り越えたり、穴を掘ったりして牡犬が侵入します。
金網越しの交雑もあり得ます。
このあたりは人間の常識をはるかに越えています。
■2分の1と2倍。
あらゆるビジネスで言える事ですが、入るお金は予定より少なく、出るお金は
予定より多いものです。
子犬の繁殖は動物まかせの事業だけに、なおさら人の計画通りには運ばず、入
りは2分の1、出は2倍と覚悟すべきです。
又、繁殖開始初年の無収入期間をどう乗り切るかは多くの参入者の課題です。
犬舎設備やフードの他、予防接種や地域によっては暖房費など見えない費用も
かかります。
ちなみに最も収益率の高い時期は繁殖開始後2年目から4、5年目ですが、こ
の後は次期台犬の導入や年寄り犬の飼育にも手間と費用がかかり続けます。
現金に替えたい気持ちは分かりますが、出産子犬の内、台犬向きの牝犬を残し
て行く事もおすすめします。
第8回テーマは「繁殖の実際」です。
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ペットビジネスは今激動の渦中にあり、今日の常識が数年で非常識になるケー
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した情報は、とかく反論も多いことをご理解ください。
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