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■ ■ ■ ■ ペットビジネスの転ばぬさきの杖
■■■■ ■■■■ ■ mail magzine 2003/05/23
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■ ■■■■ ■ 「ペットビジネス専科」 2号
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「ペットビジネス専科」はペットビジネス相談室で、日頃相談事例の多いテー
マを順次取り上げていきます。
日本畜犬学会を窓口とし、多くの団体、専門家のご協力を得て刊行されます。
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テーマ「高い犬の子犬はなぜ安い?」
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(問い)
私は数年前にB犬のメスを飼い始め2才になった時に、知人のすすめもあって
出産させました。
B犬は今でもめずらしく、当時、書物でB犬を知った私は何軒かのペットショ
ップに声をかけ、その内の1軒が子犬を取り寄せてくれました。
私の1ヶ月分の給与と同じ金額を支払ったのを覚えています。
さて10時間を超えるお産の末に何と11頭もの子犬を産みました。
買うと売るとは事情が違う事はわかっていましたが、一時は正直、11ヶ月分
の給与を手にしたような気になりました。
子犬は日増しに成長しましたが、母乳不足におちいり、人工ミルクを与えまし
たがもともと小さかった2頭が死亡し、9頭が残りました。
以下は9頭の子犬がすべて片付くまでの収支です。
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必要だった経費
交配料、交通費、レントゲン代、
ミルク、広告、血統書代、 185,000
9頭の売り上げ
知人に 1頭 50,000
業者に 3頭 20,000×3 60,000
広告で 2頭 35,000×2 70,000
近所知人 2頭 無料 0
自宅に残した1頭 0
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最近発行された書物でもB犬の参考価格は20万円以上と書かれています。
その後、母犬のブリーダーが山口県の方と知るところとなり、ザックバランな
話をした結果、当時子犬が大きくなって困っていたので「送料」のみをもらっ
て送り出したとのことでした。
子犬の流通とは何なのでしょう。
ブリーダーというのは私のように損をして子犬を産ませているのでしょうか?
どう考えてもペットショップだけが儲かる仕組みに納得行きません。
(東京都・C)
(答え)
Cさんが特別な経験をされたと言うのではなく、何度繰り返されても、この結
果と大差ないと思います。
まず、B犬は平成14年に日本で531頭産まれています。
多産犬ですから80胎位のものでしょう。
この種の大型犬は陳列に入れて売るような犬ではありませんから、ペットショ
ップは注文が無い限り、絶対に仕入れません。
業界には「子犬の市」と言うものがあり、かりにB犬がセリにかかったりしま
すと「そんなもん出すな...。」とやじが飛ぶありさまで、売れても1万円そこ
そこです。
ですから、この犬を欲しい人は80人のブリーダーの中から丁度子犬を持って
いる人を探し出さねばなりません。
消費者からこの種の犬の注文を受けたペットショップはかなり本気で探します。
高く売れるからです。
何人もの人脈を経て、B犬を見付けます。
何人もの人脈はそれぞれ仲介料をとり、最終ペットショップは何倍かを掛けま
すから、消費者は相当の金額を出す事になります。
つまり「めずらしい」犬の買い値は高いのです。
客の乗っている車で値段を決めるなんて話、ありました。
あえて言うと、この種の犬の値段はほとんどが流通コストです。
ブリーダーが売る時に安いのも、まったく同じ事情で「めずらしい」からです。
市場性が無く、欲しい人が少ないから値がつかないのです。
そもそも年間500頭しか出産がないのは、儲からないから産ませる人がいな
いのです。(同年ダックスフンドは15万頭産まれています。)
通常プロブリーダーは特種犬種を繁殖する事はありません。
プロが産ませた子犬なら流通させるためのネットワークがありますが、この種
の犬は1部の飼育者が趣味の世界で産ませるケースがほとんどですから、業者
ですら探すのが困難です。
「高い犬の子犬は安い」理由が納得いくと、逆に「安い犬の子犬が高い」事も
理解いただけるでしょう。
いっぱい産まれているから消費者が買う時は安くなります。
消費者に人気があるから生産者は高く売ることができます。
つまり人気犬種は小さな利幅で流通します。
前号でも言いましたが、繁殖は儲かるのです。ただしいくつかの条件をクリア
ーしなければなりません。
1、犬種の選定を誤ってはなりません。
「今」を見るのではなく「先」を読まなければなりません。
どんなビジネスも「ブーム」は初期には味方ですが、次の「ブーム」のため
につぶれる事も多いですから。株を買うのと良く似てます。
繁殖犬種の選定についてはあらためて、お話する機会を作ります。
2、販路を作ってから繁殖を始める。
Cさんの例でも分かるように、生体の流通は閉鎖的であり未進化です。
溝を掘ってから蛇口を開けないと悲惨な事になります。
(知っ得)
Cさんは母乳不足で人工乳を与えたとありますが、おそらく小さい子犬に与
えたのだと思います。
プロブリーダーはこのように言ってました。「大きい子犬に人工乳を与え、
満腹にしておくと、小さい子犬に母乳が行き渡る。」と。
母乳の方が優れていると言う事ですよね。
大型犬(特種犬)を飼育している方は血統書をご覧下さい。
ブリーダーは最初のお産で生まれた子犬にはAから始まる名前、次のお産で
Bと言うように名付けます。
大型犬(特種犬)の場合、Cさんの例のように2度と産ませないケースが多
いため、Aから始まる名前が多いようです。
第3回テーマは「産まなくなった親犬はどうするの?」です。
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