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【コラム】主客が逆転した日本社会(下)

 通行料を引き続き徴収するのは、発展が遅れている地域に高速道路を建設するための財源にするためだという。つまり東京に住んでいる人たちが、北海道や九州の高速道路の建設費を支払っていることになる。これは1972年に施行された「全国料金プール制」に基づくものだ。

 もちろん、道路の整備が遅れている場合には、先にメリットを享受した都市の利用者たちが、地方の高速道路建設のための財源を負担するというのはもっともな話だ。だが一方で、道路の整備が過剰に進んでいるのなら、話は別だ。

 高速道路を含む日本の道路密度(国土面積に対する道路の総延長)は3.16で、オランダ(3.72)に次いで世界で2番目だ。高速道路も決してほかの先進国に比べて遅れているわけではない。「日本の道路では“クルマ”よりも“クマ”の方が多く目撃される」という批判もある。先日、大地震による山崩れで、山岳地帯を走る道路が切れて棒のように曲がった映像が流れたが、それでも人命被害が少なかったのは、もともと人があまり通らない所に無駄な道路を造ったということを物語っている。

 それでも高速道路が造られ続ける理由は何なのか。それは「国民の利便性のためではなく、建設業者の生き残りのためだ」と言われる。日本はこれまで、高速道路の建設のために360兆ウォン(約36兆3500億円)もの借金をしてきた。資金が多ければ、それだけ利益共同体も大きなものになる。その生き残りのために道路が次々と造られ、道路を造るために国民は高い通行料を払わせられている。

 高度成長期が終われば、このように主客が逆転した分野が出てくる。役職員の食い扶持を守るために存続する公営企業、公務員を増やすために増える官僚組織、土建屋の利権を守るための公共事業、消費者と乖離(かいり)したところで闘争を繰り広げる労働組合…。1980年代中盤に国鉄が解体され、労働組合が弱体化した後、日本の改革は主客が逆転した分野を元通りにするという道をたどってきた。その最後が道路というわけだ。一方、韓国ではこのような改革がこれから始まろうとしている。

東京=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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