【北京・浦松丈二】貴州省甕安県で起きた大規模暴動について、中国政府は大々的な反暴動キャンペーンを展開した今年3月のチベット暴動とは異なり、暴動参加者への批判を控えている。暴動の背景には、腐敗が激しく地元暴力組織との癒着も指摘される、地方政府や警察に対する住民の根強い不信感や怒りがある。社会不安を抑えるために、政府もこうした住民感情に配慮せざるを得ないものとみられる。
中国では暴動を含む抗議活動が相次いでいる。政府当局者によると、15人以上の抗議活動参加者は04年に7万4000人、05年に8万7000人に上った。大半が地元政府の農地収用に抗議する農民の抗議活動だが、事件処理をめぐって地方の公安当局(警察)と住民の衝突も相次いでいる。
一方で政府は、北京五輪を前に中国の国際イメージが傷つくことを懸念している。国営・新華社通信は発生から2日後の6月30日深夜に「暴動は沈静化したが、少女の死には疑問が残る」と題した英文記事を配信した。香港メディアの報道を事実上認めた内容だが、中国国内向けには配信されておらず、海外向けに事実関係を説明する意図があったとみられる。
毎日新聞 2008年7月1日 20時12分