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【社会】諫早湾、水門開放を命令 佐賀地裁「国は被害立証妨害」2008年6月27日 夕刊
有明海の漁業不振は、国営諫早(いさはや)湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防閉め切りが原因だとして、同海に面する長崎、佐賀、福岡、熊本各県の漁業者ら約2500人が、国に堤防の撤去や排水門の開門などを求めた訴訟の判決で、佐賀地裁の神山隆一裁判長は27日、南北排水門の5年間常時開放を命じた。諫早湾の環境変化や漁業被害との因果関係を認め、国に5年間で中・長期の開門調査を速やかに実施するよう異例の付言をした。 準備に必要な3年間は開門を猶予するとしたが、漁業被害との因果関係を否定し、巨額な費用がかかることなどを理由に開門を拒否してきた国は根本的な施策の転換を迫られた。原告側弁護団の馬奈木昭雄弁護団長は「国は控訴せず、開門を実行すべきだ」と話した。 漁業者らが開門を求めた仮処分申請について地裁は「速やかに実施しなければ有明海の環境が回復不能な損害を被るとまではいえない」と却下した。 判決理由で神山裁判長は「有明海の漁業被害と堤防閉め切りの因果関係は、データが不足しており認めるのは困難だが、諫早湾内とその近くの漁場については相当程度の立証がされている」と認定。「公害等調整委員会などからも求められてきた中・長期の開門調査に応じないのは、原告が主張する被害の立証を妨害するものと言わざるを得ない」と国の姿勢を厳しく非難した。 事業の公共性については「防災機能は新たな工事により代替できる」とし、開門による調整池への海水導入で支障が出る干拓地の農業も「漁業行使権の侵害に優越する公共性や公益があるとは言い難い」と指摘。「判決を契機に中・長期開門調査が実施され、それに基づき適切な施策が講じられることを願ってやまない」と結んだ。 諫早湾の干拓には総事業費約2500億円が投じられ、費用対効果や環境への配慮をめぐり大型公共事業の在り方が問われてきた。 原告らが工事差し止めを求めた仮処分申請では、佐賀地裁が2004年、漁業被害を認めて差し止めを命令。工事は約9カ月間中断したが、福岡高裁の取り消し決定で再開され、今年3月に完了した。現在は干拓地で営農が始まっている。 ◆「諫早湾」判決骨子▼国は潮受け堤防の南北排水門を5年間常時開放せよ ▼防災機能代替工事のため、判決確定から3年間は開放を猶予する ▼堤防閉め切りと有明海全体の環境変化の因果関係は認められないが、諫早湾内については相当程度立証されている ▼国が中・長期の開門調査に協力しないのは漁業者らへの立証妨害 ▼開放で農業生産に支障が生じたとしても、漁業行使権侵害に優越する公共性、公益上の必要があるとは言い難い 【国営諫早湾干拓事業】 長崎県の農地造成などを目的に、1986年から有明海の諫早湾で始まり、97年に湾の奥を約7キロの潮受け堤防で閉鎖した。潮流が変わり漁業不振になったとして、有明海の漁業者らが2002年、佐賀地裁に工事差し止めを求めて提訴し、仮処分も申請。地裁は差し止めの仮処分を命じたが、福岡高裁、最高裁が工事続行を認めた。その後開門を求める仮処分を申し立て、本訴の請求も堤防の撤去と開門に変更した。工事は昨年11月にほぼ完了し、総事業費約2500億円。造成された農地は約680ヘクタール。
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