殺意や故意ではない「医療事故」への対応

日本の医療崩壊(2)

梅沢 清志(2008-07-01 16:55)
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日本の医療崩壊( 1)」からのつづき

マスコミ報道・訴訟

 昨今、医療事故に関して、異常なまでの反応を見せるマスコミ。多くの国民は、「医療事故」と「医療ミス」の区別がつきません。

 どんなに簡単な手術でも、ある一定の確率で合併症が起きます。例えば、腸や食道の手術をしたとき、腸管の吻合(ふんごう)不全が起き、腹膜炎を起こしたりするのは一般的な合併症です。医者も最善を尽くし、合併症を起こさないよう術後経過処置を行っています。だが、残念なことに腹膜炎で死亡する患者さんもいます。

 分娩(ぶんべん)も同じです。絶対安全とはいえません。これにもさまざまな合併症が起きます。そのため、胎児・母体に危険がおよぶこともあります。

 こうした事例が起きるとマスコミは「医療ミス」として報道します。

 場合によっては「業務上過失致死罪」として警察に逮捕される場合があります。医者の怠慢もあるかもしれませんが、先進国の中では極めて異例なことです。殺意や故意ではない「医療事故」について、警察の手が入ることはほかの国では考えられないのです。

 もちろん、カルテの改ざんなどは、違法行為であり、司法によって裁かれるのは当然です。日本のマスコミはともすると鬼の首を取ったかのごとく騒ぎ立て、国民もその報道に煽(あお)られてしまう。また、民事でも一部の裁判官が医者に過剰な責任を負わせる判決を連発している。例えば、何度説明しても言うことを聞かない患者が結果的に死亡すると、「もっと強く薦めるべきであった」との判断をする。

 もはや日本の医療訴訟は、ごね得になってきてしまった。特に被害者側の弁護士などの主張は、医療行為の知識もなく、ただただ賠償請求に専念し、無理難題を押し付けてくる。また、支援団体などが何も分からずに声高に医師批判をする。

 このような状況になると、医者と患者の信頼関係が崩れてしまうであろう。これでは、特に外科系の医師などはやる機をなくしてしまう。

 産婦人科の崩壊はこのようなことから始まったのです。多くの産婦人科医師が、分娩から手を引き、婦人科専門になったり、開業医になったりしており、ますます産婦人科医が少なくなってきています。

 医者の中には、横柄なものや、患者の気持ちも分からず、金銭欲に走っている者もいます。だからこそ、もっと医者を増やし、競争原理の中で患者が医者を選択できることが本当に安心して自分の体を任せられることだと思う。そのような医者を育てることが必要ではないでしょうか。

 今は「産科の崩壊」「小児科の崩壊」だけが騒がれていますが、水面下ではほかの科でも崩壊が始まっています。

(3につづく/全8回)


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