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かながわ瓦版/診療所・助産所での出産減少 横浜市調査
- 2008/07/01
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病院に集中傾向
出産は病院に集中傾向-。横浜市が産科医療を担う病院と診療所、助産所を対象に実施した調査で、二〇〇六年度以降の出産件数が診療所と助産所で減少する一方、病院では増加していることが分かった。産科医不足で出産を扱わない施設があることに加え、診療所や助産所での出産件数が減ったことが、産科を設ける病院の負担をより重くしているようだ。市健康福祉局は「出産を扱う病院の負担を軽くするだけでなく、市民が出産する施設の選択肢を減らさないようにしたい」と話している。
◇ 差は開く
市が出産を扱う市内の医療機関六十四施設にアンケートを実施したところ、六十一施設(病院二十六、診療所二十四、助産所十一)が回答。それによると、市内の〇七年度の出産取扱件数は計二万七千八百九十六件で、前年度から千三百七十一件増加した。
〇七年度の一施設当たりの出産件数の平均は、病院が七一三・六件、診療所は三五六・三件、助産所が七二・一件。前年度に比べ、病院が五十件近く増えている一方で、診療所は約十七件、助産所は約十件減少した。〇八年度の見込み数も同様の傾向を示しており、「病院集中」は今後も続きそうだ。
◇「悪循環」
産科医は出産に伴う母子の死亡事故などで訴えられるリスクが大きい。勤務時間は不規則になりがちな上、女性医師が多く、出産や子育てで離職する率が高いこともあって慢性的な不足が続いている。
厚生労働白書(〇七年)によると、全国の産婦人科・産科医数は、一九九四年の一万一千三百九十一人から二〇〇六年は一万七十四人に減り、この数年は年間二百五十人前後減少。出産施設も、一九九六年は三千九百九十一カ所だったが、二〇〇五年には約四分の三の二千九百三十三カ所に減った。
市によると、医師の負担が大きい産科は、少人数の医療機関の場合、一人減るだけで休業に追い込まれる例も珍しくないという。昨年も栄区内の総合病院が休業に踏み切った。調査でも、病院と診療所各一、助産所二の計三施設が〇八年度中に「出産の取り扱いをやめる」と回答した。
◇側面支援
全国的に産科医が減少する中、市内の常勤医師は〇七年度の百五十人に比べ、〇八年度は約二割増の百八十一人に増加。しかし、産科医は定着率があまり高くないこともあって、医師数についての調査でも、必要だと考える人数に対して実数が「不足」と回答する施設が多く、医師の負担は変わらず大きいようだ。
市は「医師の増加は個々の病院の努力によるものでうれしいことだが、継続的に確保できるかが重要であり、産科医療を取り巻く環境は依然厳しい状態」と説明する。
市は〇八年度、医師の負担を軽くするワークシェアや、院内保育所を整備した医療機関に最大で五百万円を助成する新規事業などで、産科医の確保に力を入れる方針だ。