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【社説】

年金記録訂正 最後まで手を緩めるな

2008年7月1日

 厚生年金の加入記録が1・4%も間違っていたことは、社会保険庁の業務がいかに杜撰(ずさん)だったかをあらためて示した。政府は事態を深刻に受け止め、記録訂正に総力をあげなければならない。

 従来の年金記録不備問題は、社会保険庁のコンピューターオンラインシステムに入力されたまま持ち主が不明の五千万件の加入記録を、いかに基礎年金番号に統合して給付に結びつけるかだった。

 政府が公表した資料によれば、このうち二千百万件は、死亡が判明したり、脱退一時金を受給して新たな年金の受給権がないことなどが確認できた。

 コンピューター上の照合の結果、基礎年金番号と統合できる可能性が高い記録については「ねんきん特別便」を送付したが、千万件がまだ統合されていない。

 ほかに氏名などが間違って入力され補正作業中のものなどが合わせて千九百万件残っている。

 一連の作業は、紙台帳の年金記録が正確にオンラインに入力されている前提で進められてきた。

 ところが今回明らかになったのは、これとは別の問題だ。過去の約四億件の厚生年金紙台帳とオンライン記録をサンプリング調査で照合したところ1・4%も不一致だった。全体で五百六十万件の記録が間違っている計算になる。

 年金加入日や年金額算出の基礎となる「標準報酬」などの入力ミスが多く、いくら加入記録を基礎年金番号に統合しても本来の年金額を受給できない可能性がある。

 入力ミスは以前から指摘されていたのに、それを無視してきた社保庁の責任は重大だ。

 社保庁は、紙台帳とオンライン記録を照合するシステムを開発し、記録訂正を始めるが、作業を終えるのに要する年数については見通しが立っていない。

 この作業を行うのに、低く見積もっても百数十億円かかる。厚生年金の加入者・受給者には全く責任がないのに、全額税金で賄うことに疑問を持たざるを得ない。

 社保庁は二〇一〇年一月に解体されて「日本年金機構」に組織替えされるが、政府は責任を曖昧(あいまい)にしてはならない。記録訂正を完全に行うために、今後、国家的政策として取り組む覚悟を国民に示すべきだろう。

 ただ政府の作業だけで記録訂正を完全に行うのが困難なことも事実だ。国民も自分の加入記録について納得できるまで何度も社保庁に問い合わせ、自分の年金は自分で守るようにしたい。

 

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