昨夏、本欄で、日中友好に尽くした井原市芳井町出身の内山完造(一八八五〜一九五九年)を顕彰する訪中団が上海を訪れた一件を報告しました。今回はその続報です。
訪中団を組織した市民団体「先人顕彰会・井原」は今年六月、総会を開き、完造没後五十周年の記念式典を二〇〇九年五月十七日、井原市民会館を会場に、中国からも関係者を招いて挙行することを決めました。式典では、中国近代文学を代表する作家・思想家の魯迅(一八八一〜一九三六年)と完造との絆(きずな)▽中国人から見た完造▽戦後の日中友好―の三つのテーマで構成される記念講演、シンポジウムが計画されています。
もう一つの事業の目玉、漫画「内山完造の生涯」は今年九月末までに五千部発行する予定で、笠岡市在住の漫画家・南一平さんによる執筆が順調に進んでいます。少年期から妻・みきとの上海での生活、魯迅の最期、日本敗戦後の日中友好の模索―といった内容が、時代背景を踏まえながらも分かりやすい作品に仕上がりそうです。
ところで来年は、岡山県吉備中央町出身の実業家で、日中国交回復に尽力した岡崎嘉平太氏(一八九七〜一九八九年)の没後二十周年にも当たります。岡崎氏は敗戦翌年まで、大使館員として上海で邦人引き揚げにも力を注ぎました。
両者は活躍の背景こそ違え、願ったところは同じでしょう。「岡山」に視点の一つを据えるならば、二人の偉人の努力と活躍を重ね合わせながら、日中の在り方を考える試みも必要かもしれません。
(笠岡支社・河本春男)