針の穴を通す、といった表現が大げさではないようだ。東京で今月開業した新しい地下鉄・副都心線と既存路線のトンネルの最小間隔は上下わずか十一センチだという。
副都心線は約二千五百億円を投じて、池袋、新宿、渋谷という東京の名だたる副都心を結んだ。張り巡らされた地下鉄網のすきまを縫って掘り進んだために、きわどい工事となった。他のトンネルを壊さずに実現した技術力には感心する。
地下約二十五メートルにある渋谷駅のホーム上には、宇宙船をイメージした巨大な吹き抜けがある。著名な建築家・安藤忠雄氏の設計で、ぜいたくな地下空間を演出している。
副都心線と並行する環状道路の約三十メートル下では、高速道路の建設が進む。首都高速道路の混雑解消を目指した、全国初の都市内の長大トンネルだ。池袋―新宿間が昨年末に完成、来年度には新宿―渋谷間もできる。
さらにもう一つ外側の環状道路の地下にも、巨大な空間が今春完成した。内径約十三メートル、延長四・五キロのトンネルで、大雨の際に神田川などからあふれる水を流し、水害を防ぐ「調節池」だ。
一極集中が加速する東京では、際限のない地下利用が進み、地上でもビルの超高層化が相次ぐ。一方で人口減の地方圏には未利用地が広がる。もっとおおらかな国土利用はできないものか。