【萬物相】サイバー廃人
1988年から89年にかけ、東京・埼玉で、幼い少女が誘拐・殺害され遺体が損壊されるという猟奇的な事件が次々と発生した。犯人は、宮崎勤という20代半ばの青年だった。彼の部屋からは、数千冊もの漫画やアニメのビデオが発見された。この事件を契機として、それまで一部のマニアの間だけで通用していた「おたく」という言葉が日本で広く知られるようになった。
「おたく」とは、漫画・アニメ・ゲームなどにのめり込む日々を送っている人を指す。宮崎勤事件などの影響で、「おたくは社会不適応者だ」という認識が広まったこともあった。しかし、その「おたく」出身の押井守監督の作品『甲殻機動隊』が1995年に国際アニメーション映画祭で大賞を受賞して以降は、おたく文化が日本の文化コンテンツ産業の競争力を高めた、という評価も出ている。
日本に「おたく」がいるなら、韓国には「ペイン(廃人)」がいる。韓国のペインは、主にサイバー空間で活動する。中でも、デジタルカメラ情報サイト「DCインサイド」は「ペインのメッカ」と呼ばれている。デジカメをいつも持ち歩き、あちこちで撮ってはインターネット上にアップ、そうしてコメントをもらうのを楽しむ。加えて、昼間は寝て夜に活動する「昼寝夜活」、いつもラーメンやパスタで食事を済ませる「麺食」の2条件も兼ね備えれば、「DCペイン」になることができるという。
最近では、「アゴラ・ペイン」がかなり増えているらしい。ポータルサイト『ダウム』が運営する討論掲示板「アゴラ」で、夜を明かす人たちだ。アゴラにアップされる書き込みは、一日当たり1万件近くもある。これを漁り推薦のコメントを付け、あるいは反対意見を攻撃するには、一日24時間でもまだ足りない。5月初めから続いている米国産牛肉輸入反対のキャンドルデモは、インターネット世論を主導する彼らサイバー・ペインの力をはっきりと示している。
あるインターネット市場調査機関が、今年4月から6月18日にかけてアゴラに掲載されている文章を分析したところ、上位10人が2万1810件を書き込んでいたという。最も多く文章を載せた人物は、一日平均40件、計3170件を書き込んでいた。同じ文章を「政治コーナー」「経済コーナー」「社会コーナー」など幾つもの場所に載せていた、という理由もあるにせよ、普通の人間には考えられない熱意だ。しかし、こうした「ペイン文化」のエネルギーがクリエイティブで生産的な活動に繋がらず、下品な言葉ばかりが飛び交う険悪な争いに浪費されているというのは、見るに堪えない。
キム・ギチョン論説委員
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