SNSの終焉(下)

ブームにのしかかる情報保護と説明責任の重圧

三田 典玄(2006-12-19 18:23)
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 〈SNSの終焉(上)から続く〉

「ひょこむ」のキャプチャー画面
 じつは兵庫の「ひょこむ」に、この9月、登録申請をしたが、結果として登録はあきらめた。要するに、「ひょこむ」は、「匿名、不明瞭な個人情報の登録は一切許さない」という、非常にきつい個人情報の登録基準を持っていながら、アクシデントなどが起こった場合の個人情報の扱いについての明確な処置についての解答を、「ひょこむ」の実質的主催者である「こたつねこ」氏が持っていなかったからである。

 また、自分の情報の抹消・削除さえできない(変更はできるが)システムであることも判明した。記者は、このシステムの信頼性や個人情報の扱いのやりかたに、非常に疑問を持った。なお、「ひょこむ」は、現在、非常に個人的なネットワークに特化しており、行政からの支援は一切受けていない、という、いわば「個人ネットワーク」となり、さらに、一層厳しい入会規制をしているという。個人のネットワークなので、税金の無駄使いはない、と言える。しかし、個人情報の取り扱いの問題はいまだに大きな問題として残る!(このときの「ひょこむ」の「こたつねこ」氏とのやりとりは、私ので恐縮だが、以下ご参考。http://blog.mita.minato.tokyo.jp/archives/2006/09/SNS.html

 2008年には、現在施行されている個人情報保護法とともに、新「金融商品取引法(J-SOX法)」が施行される予定である。この法律の中には、企業の内部統制などについて非常に厳しい文言が多く、とくにITシステムについては「IT統制」ということばが示す通り、多くの規制が敷かれることになる。

 こういう大きなIT統制の流れのなかでは、地方自治体といえども、というより、自治体だからこそ、より詳細でより正確な、システムについての説明責任を求められることは必至の状況である。

 この現状を考えれば、これらの「地域SNS」が、職員の「お手製」だったり、セキュリティ予算が組まれていないサービスであったりすることは、たとえ地域活性化目的のためだとしても、許されまい。ましてや「不完全かも知れないシステム」への説明責任を放棄しつつ、個人の情報だけは、自分たちの安全のためにすべて搾取しよう、という「ひょこむ」の姿勢には、疑問を持たざるを得なかった。

 現在mixiの会員は530万人を超えたところだが、いよいよ頭打ちかもしれないことが数字でも表れている。規約では禁止している複数アカウントを1個人が持つ、などの行為も非常に多いとあちこちで聞く。利用者がこれだけ広範に拡がれば、mixiでも初期にあったと言われるある種の「ステータス」感はもはやない。

ブログの開放性への抵抗感が、会員制サービスSNSの人気につながったのだが……(ココロ・プラネット会員規約のキャプチャー画面)
 地方自治の現場では、これらのSNSの利用者は、もっとも盛んなところで1000人程度がせいぜいである。「地域活性」に本当につながるのかどうか、これらSNSを導入した自治体の内部からも疑問の声は上がっているという。一部には「税金の無駄使いをまたやる気か!」との怒りの声も住民から上がっているらしい。

 そういえば、インターネットが話題になった2000年当初、さらにさかのぼれば、1990年代後半のパソコン通信の時代に、「地域BBS」という、「掲示板システムで地域活性化を」ということが叫ばれたこともあった。

 今回の「地域SNS」も内容的にそれと大差はない。人によっては「わざわざSNSを立ち上げるよりも、mixiの内部にコミュニティ作ったほうが早いんじゃないの」という声もある。もっともだと思う。

 じつは表には出てこないが、現在、企業の内部で社員の横のつながりをより一層強固にするために、企業内部でのSNSの導入が盛んに行われている。また、広告媒体としてSNSを独自に立ち上げるところも出てきている。SNS業界は、現在「活況」を呈し、投資家の投資熱もSNSに向いているらしい。弱小のSNS開発企業には、これを契機に会社の上場を画策しているところもあると聞く。

 とはいえ、mixiの「頭打ち」が象徴するように、SNSはそろそろ「下り坂」に向かっているように私には思える。すでにmixiはじめ、多くのユーザを集めているSNSでは、サイト内での犯罪なども多発しており、ユーザがまるで集まらない多くの弱小SNSはこの年末を境に、システムの停止をするところもぼつぼつと出始めている。

 一方で、少数ながら「農業SNS」など特定分野に特化したSNSや、内部を常に巡回して「不正書き込み、不愉快な書き込みは一切許さない、安心して使えるSNS」を謳うココロ・プラネットなどのSNSも登場して、少しずつユーザを増やしている。自分のページをブログとして外部に公開できる、などの機能を持った「オープン型SNS」も、登場している(ビート・コミュニケーションの「vyyt」が有名)。

 技術的には、すでに使い古された技術を利用したSNS。orkutの出現からわずか2年。この間のIT業界の流れの速さと、ネットの統制と混沌、そして淘汰。SNSはその時代の最先端を、今はいろいろな意味で突っ走っている。


 本文中に出てくる団体等のリンクで、本文中に書いていないもの:

●orkut
http://www.orkut.com/
●MySpace
http://myspace.com/
●mixi
http://mixi.jp/
●伊藤譲一氏のBLOG
http://joi.ito.com/jp/
●ココロ・プラネット
http://www.kokoroplanet.jp/
●オープン型SNS「vyyt」
http://www.vyyt.com/

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