今年の最低賃金改定は改正最低賃金法の施行と政府の「円卓会議」での中長期方針合意という追い風の中で行われる。大幅な引き上げを実現してワーキングプア(働く貧困層)撲滅につなげたい。
労働者にとって賃金は一番の関心事である。最低賃金は企業などがこれ以下の賃金で雇って働かせてはならない−と国が歯止めをかける制度だ。原則として正社員もパート・アルバイト、派遣・請負社員もすべての労働者が適用対象となる。
今年は違反企業への罰則強化などを盛り込んだ改正法が七月一日から施行される。また政府の成長力底上げ戦略推進円卓会議は最低賃金を中長期的に引き上げることで政労使三者が合意した。
同会議は具体的に「生活保護基準との整合性」や「小規模事業所の高卒初任給の最も低位の水準との均衡」を考慮して五年程度かけて引き上げることを確認した。
最低賃金が生活保護費を下回らないようにすることは当然のことだ。昨年の最賃改定では全国平均で十四円引き上げたが、それでも東京都や大阪府など九都道府県で生活保護費を下回っている。
また引き上げ目標として高卒初任給を取り上げたことは評価できる。ただ、どの程度の企業規模とするのか調整を急ぐ必要がある。
経営側は従業員二十人以下の企業を対象とすべきと主張した。
一方、労働側は十−九十九人規模を取り上げた。〇七年度の初任給は時間給換算で七百五十五円。これは現在の全国平均の最低賃金六百八十七円を六十八円上回る。仮に五年間で埋めるとすると毎年十四円近くのアップとなる。
経営側は最賃の大幅アップは地方の中小企業の倒産や工場などの海外移転が増えて雇用に悪影響が出る−と苦しさを訴えている。
経営の厳しさは理解できるがここは生産性の向上や職業訓練強化などを行って乗り切るべきではないか。時給七百五十五円でも年収は約百五十九万円。この程度の賃金も払えないとなると、企業としての存在価値が問われよう。
今年の最賃改定は今月末から中央最低賃金審議会で作業が始まり、地方最低賃金審議会での審議を経て十月ごろに正式決定する。
欧米主要国と比べれば日本の最低賃金はまだかなり低い。日本の非正規雇用者は一千七百万人を超え、多くが年収二百万円以下とされる。賃金水準の底上げは経済の活性化からも緊急課題である。
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