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【社説】

携帯競争激化 世界の波が押し寄せる

2008年6月30日

 米アップルの携帯電話iPhone(アイフォーン)の発売と基本ソフト無料化という二つの大波が、わが国の携帯市場に押し寄せつつある。この試練を逆に世界に乗り出す機会として生かしたい。

 アイフォーンは、キーボードを省き、大型液晶画面を直接指で触れて操作するタッチパネル方式のデザインが特徴だ。

 音楽のダウンロードやゲーム機能にも優れ、昨年六月に米国で発売以来、世界で六百万台を売り上げた。日本ではソフトバンクモバイルが七月十一日から発売する。

 前人気も高く“黒船到来”にたとえる声もある。

 基本ソフト無料化に火を付けたのは米グーグルだ。昨年秋、「携帯の基本ソフトを自主製作し、無料で公開する」と発表した。ネット検索トップの同社が、無料ソフト提供を携帯分野進出の足掛かりとする作戦だ。

 六月下旬、世界の携帯メーカー最大手のノキア(フィンランド)も、これまで有償で提供してきた基本ソフトを無料に切り替えると発表した。

 このソフトはすでに、高機能携帯向けで世界トップのシェアを誇っている。無料化すれば利用企業はさらに増えるに違いない。

 基本ソフトは利用者の目に直接は触れないが、携帯メーカーをグループに囲い込む意味では大きなインパクトを秘めている。

 日本の場合、これまではドコモ、auなどの携帯電話会社が頂点に立ち、NEC、富士通などのメーカーはその下で規格通りの電話機を作って納入する上下関係のグループを形作ってきた。

 メーカーの利益は少ないが、売れ残る心配もない微妙な関係でもある。日本の携帯がコストダウンにしのぎを削る国際競争で後れをとった一因ともされている。

 もう一つ見逃せないのはグーグルとノキアが無料化と同時に情報も公開し、優れた応用ソフトを開発するよう世界の企業に呼び掛けていることだ。

 無料ソフトでコストダウンし、国際協力で高い機能を持つ製品が入ってくれば、日本勢は苦境に立たされよう。

 だが、苦境は好機でもある。国際舞台を目指す企業にとっては飛躍するチャンスだ。

 優れた技術力を持ちながら国内事情で実力を発揮できなかった企業もあるに違いない。世界を相手に勝負できる安価で高性能な携帯作りを目指してほしい。

 

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