◎小学生の学力向上策 補充教室は土曜も活用したい
小学生の学力向上策として、石川県教委は退職教員を放課後に派遣する補充教室をモデ
ル地域の五市町で始めたが、学校外の人材を生かした学習支援に本格的に取り組み、県内全域に広げるなら、放課後だけでなく土曜日の活用も検討していいだろう。
実際、能美市では今年度から「フォローアップスクール」と銘打ち、土曜日午前中を使
って退職教員らによる補充教室を始めた。夏休みや放課後の補充教室は例があるが、年間を通して土曜日を活用するのは県内初の試みである。
改定された学習指導要領では主要教科の授業時間を増やす一方、週五日制の維持が確認
されたが、土曜日が休日だからといって学習する機会をことさら避ける必要はないだろう。地域の実情に応じ、学びの場を柔軟に設定し、学習支援策を充実させてもらいたい。
県の事業は退職教員が「補充学習サポーター」として地域の小学校を訪れ、希望者を対
象に放課後に補充教室を開く。学力差が生じやすい三、四年の算数が対象で、今年度は金沢、能美、かほく、輪島、中能登の推進校で始まった。
教員の大量退職がこれから本格化することを考えれば、ベテランの指導力を子どもたち
の学力向上策に生かさない手はない。県は二年間かけて成果や課題を検証するが、学年や教科の拡大、さらには土曜日の活用も検討してほしい。
一方、能美市のフォローアップスクールは小学四―六年生の算数を対象とし、根上、寺
井、辰口の公民館など三会場で実施される。受講は無料で、初回は全体の一割近い約百五十人が集まった。地元の退職教員ら講師十八人を確保し、来年三月まで夏休みを除き、年間三十回の教室を予定している。
教室では児童が持参した教科書やドリルを使い、その週に学んだ内容を自習形式で復習
する。つまずきや遅れを取り戻し、基礎学力を身につけるのが主な狙いだ。
能美市教委の独自事業として教室が始まったのは、保護者から学校週五日制や「ゆとり
教育」による学力低下を心配する声が強かったからだという。同様の思いは他の地域でもあるだろう。教委や学校側は真摯に受け止めてほしい。
◎倒産続く介護事業者 根幹から見直しのとき
介護事業者の倒産が最悪のペースで進んでいるという。介護現場の人手不足が要因の一
つで、介護職の待遇改善が待ったなしの課題であることがあらためて浮き彫りになっている。事業者に支払われる介護報酬は来年度に三年ごとの改定の年を迎えるが、報酬の引き上げという対症療法的な見直しにとどまらず、介護保険制度の根幹からの見直しが必要なときにきている。
介護報酬は給付費抑制のため二〇〇〇年度の制度発足後二回の改定で、いずれも引き下
げられた。これが経営の打撃となり、介護職の確保がますます困難になっている。介護職の給与水準は全産業の平均を下回っており、舛添要一厚労相は介護職の待遇改善のため、来年度に介護報酬の引き上げをめざす考えを示している。
ただ、介護報酬の引き上げは当然、介護保険料の引き上げに連動することになる。お年
寄りの保険料負担はすでに限界に来ているという声も強く、保険料アップの理解を得るには政治の決断と説得の努力が必要である。
一方、財務省は最近、社会保障費削減の観点から、もし介護保険制度の対象から「軽度
」の要介護者を外すと、介護給付にかかる費用が年間で約二兆九百億円減少するとの試算を提示している。国、自治体の財政負担の軽減だけでなく、現在四十歳以上が払っている保険料も大幅に節約できるというわけであるが、厚労省側は「介護の現場を知らない機械的試算だ」と批判している。
こうした介護保険制度の根幹にかかわる問題として、保険料負担の対象者を三十九歳以
下の人たちに拡大することもかねて議論されている。これも国民の理解を得にくい改革案である。といって、持続可能な制度にするための根本的な改革論議をいつまでも先送りしているわけにもいくまい。
介護職は「重労働・低賃金」のイメージが広がっており、このまま若い人らの介護職離
れが進めば、「介護崩壊」が現実のものになりかねない。介護職がもっと働きがいのある仕事と認められる制度、社会にしたい。