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2008年6月30日

 明治時代に大森貝塚を発見した米国の動物学者エドワード・S・モースは日本について「この国には、楽書(らくがき)の痕(あと)をさえとどめた建物が、一つもない」(石川欣一訳「日本その日その日」平凡社東洋文庫)と絶賛している

さらに「善徳や品性を、日本人は生まれながらに持っているらしい」とも記している。来日した外国人のわが国に対する賛辞は数多い。極東の島国で見た倫理観の強い国民に、不思議なものを見る思いだったろう

イタリアの世界遺産地区の大聖堂に岐阜と京都の大学生らが落書きをしていた。旅行の記念に書いたそうだ。子どもの旅行でもあるまいし幼稚な考えに情けなくなってしまう

あきれた話はまだある。牛肉やウナギの産地偽装。しゃぶしゃぶ店の肉の使い回しまで出てきた。何度同じことを繰り返すのか。かつてたたえられた勤勉さや正直さのかけらも見いだせない

日本は恥を知る文化といわれる。人に迷惑をかけるような恥ずかしいことをしないというのだが、いつのまにか恥知らずの文化になったようだ。すべての美徳が不思議の国の夢物語になってしまいそうで恐ろしい。


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