先週、金曜日。「ジャズ&ジャイヴ」に行く前に、手に入れたばかりのレコードをチェックしていました。「ゴールデン・シクスティーズ・コレクション・コロムビア編T」というオムニバス盤の中の、麻生京子の「ハンガリア・ロック」という曲。ぼんやり聴いていたのに、この曲だけ、歌詞がいきなり耳に突き刺さってきました。

もしこの世に男と女がいないとしたら、
この地球の上に住んでも意味がない。
もしこの世に素敵なロックがなかったならば、
この地球の上に住んでも意味がない。
もしこの世に恋人同士がいないとしたら、
この地球の上に住んでも意味がない。
もしこの世に楽しいリズムがなかったとしたら、
この地球の上に住んでも意味がない。

月はとても綺麗だけれど、あそこに住んでも意味がない。
さあさ、この世に住んでいる人なら聴いて。
ハンガリアの街からたったいま届いた素敵な楽しいイカしたロック。
(訳詞・漣健児)

ハンガリア、って東ヨーロッパの都市でしょうか。浦沢直樹の「MONSTER」の後半に出てくるような、人の気配のない街で、たった独りで音楽を流し続けているディスクジョッキー。何だかレイ・ブラッドベリの短い小説のような、泣きたくなるようなワンシーン。でもどこかで誰かがその電波をキャッチして、音楽を聴いているのです。

きょうの「レコード手帖。」はビーチェさんのアルバムのエンジニア、塚田耕司さんが寄稿してくださいました。今週から、何となくビーチェさん月間。何となく、ですが。特集はいつ始まるのかな。ビーチェさん、原稿の続きは書いてくれているでしょうか。この孤独なウェブサイトから発信する原稿、きょうもどこかで誰かが読んでくれている、と思っています。では。

(小西康陽)