先進7カ国でエイズ患者の数が急速または穏やかに減少に向かう中、日本だけが増加の一途をたどっている。感染経路は同性間、異性間の性交渉が圧倒的に多く、20代から30代に集中しているのが特徴である。
1981年アメリカのロサンゼルスに住む同性愛者男性に始めて発見されたAIDS。その翌年、アメリカから帰国した男性に感染者が現れ、AIDSの日本上陸が確認された。
一方、輸入した血液製剤からの感染も明らかとなり、AIDS感染は性交渉(同性・異性)と薬害感染が混同され、しばしばメディアを騒がせてきた。あれから26年、厚生労働省のエイズ動向委員会が年4回発表するHIV感染者数とAIDS患者数を発表しているが、年々増加しているにも拘らずメディアの扱いも小さく、世間の関心も低くなっているようである。現在、全世界でのHIV感染者は5,000万に達するといわれ、その殆どがアフリカ、アジアの貧困地域に集中している。
しかし、先進7カ国では急速または穏やかに減少に向かう中、日本だけが増加の一途をたどっている事実はあまり知られていない。5月にエイズ動向委員会が発表した統計によれば、3月30日現在の日本のHIV感染者&AIDS患者の総計は1万5,625人(凝固因子製剤による感染者は1,438人)である。また、昨年の12月31日から今年の3月30日の間では、HIV感染者251人、AIDS患者94人が報告されている。
※かつてのマスコミのエイズ騒動から見ればこの数字は驚愕に値するはずなのだが……。
報告によると感染経路は同性間、異性間の性交渉が圧倒的に多く、20代から30代に集中しているのが特徴である。この背景としては日本の性行動の活発化と若年化があると見られている。東京だけでも1,000人に1人の割合で感染している可能性があるとの報告もあり、検査を受けていない人数を考慮すると全国で数万人に達している可能性も指摘されている。
AIDS爆発の危機
問題なのは検査を受けていないHIV感染者で、全国に3,000人以上の可能性が報告されており、この人たちが日々感染させている現実がこの国で進行中なのである。現在、HIVウイルスの撲滅までには至っていないものの、効果的なHIV薬が開発され、1日1回の服用でAIDSの発症・進行を大幅に抑えることができるようになっている。とにかくHIV検査を徹底し、感染防止を早急に進めなければ「AIDS爆発の危機」が迫っているのである。その為には「性」を隠蔽しがちな習慣から脱し、教育現場や家庭での教育が望まれている。
川田龍平参院議員
そんな中、東京六本木で産婦人科を開業している赤枝恒雄医師が6年前から六本木、麻布、原宿に集まる若者のためにAIDS無料検査を実施し、「男は女を守ってくれない」をスローガンにガールズガードを立ち上げ、AIDSを始めとした性病撲滅の活動と、薬害HIV感染者でありながら参院議員として活躍する川田龍平議員を取材したので御覧頂きたい。
補足:
・AIDS(後天性免疫不全症候群)は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす病。
・感染ルート:性交渉による感染、血液による感染、母子感染、血液製剤による感染。
・検査:HIV感染検査は抗体の有無を測定するため、感染後数週間、人によっては一ヶ月程度経過してからでないと、検査結果が陰性と出る場合がある(ウィンドウ期間)。検査は全国の保険所で匿名・無料で受けられ、30分以内で結果がわかる。献血で感染が判明しても原則的に本人には通知されないことになっている。
参考資料:
・
エイズ動向委員会報告
・
(財)ガールズガード
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