日本全国で、産婦人科のお医者さんが減っています。女性が赤ちゃんを産むとき、必ずお世話になるお医者さんですが、このままでは安全なお産が難しくなりそうです。【文・戸嶋誠司/え・渡辺正義】
◇ポイント
<1>お産を扱う全国の病院や診療所は、ここ10年あまりで1000か所以上減り、現在は約3000か所
<2>産婦人科のお医者さんも年々減っている。現在は全国に約8000人
<3>産婦人科のお医者さんが減った結果、一人当たりの当直回数が6年前に比べて3割も増えた
<4>仕事が忙しいため、産婦人科のお医者さんのなかでも、女医さんの方が辞める割合が高い
<5>近くに産婦人科医がいないため、遠くの病院を探す「出産難民」も増加
◇産婦人科が減っている
お産は特別な医療です。妊娠が分かったあと、出産まで異常がないかどうか何回も検診し、長い間妊婦さん(お母さん)の面倒を診ます。赤ちゃんはいつ産まれるか分からないので、夜中でも病院に駆けつけます。しかし、長時間の勤務や、医療事故が起きたときに裁判で訴えられることが増え、産婦人科医を辞めたり、目指す人が減りました。その結果、お医者さんが減って産婦人科自体を閉鎖する病院が増えています。
◇夜中でも勤務
今も昔もお産には危険が伴います。陣痛が始まったり、出血したり、赤ちゃんがなかなか産まれなかったり。ですから、必ず病院には夜の間、当直のお医者さんが詰めています。しかし、お医者さんの数が少なければ当直の回数は増えます。1か月に10回以上宿直をする場合や、睡眠不足のまま翌日の勤務に入ることもあります。頭がぼーっとして、正確な診断ができなくなる恐れもあります。
◇女医さんも辞めていく
30歳代までに限ると、産婦人科のお医者さんは男性より女性が多くいます。しかし、この女医さんたちが結婚し、いざ出産しようとしても、勤務が厳しいため育児休暇を取ったり、早く家に帰ることは困難です。女医さん自身が出産・育児と仕事の両立に悩んでいます。
◇どうすればいいの?
お母さんが安心して、元気な赤ちゃんを産むためには、住んでいる場所の近くに産婦人科のお医者さんがたくさんいて、いつも診察してくれる体制が必要です。そのためには、お医者さんの数を今より増やさなければなりません。
◇政府に求めています
お産にかかわるお医者さんの団体は(1)お医者さんの勤務条件の改善(2)報酬(給与)の引き上げ--を目標に掲げ、その結果、産婦人科医を目指す若手医師を増やすよう政府に求めています。また、国民に対しても、安全なお産が保障されるよう、こうした状況と動きを見守ってほしいと訴えています。