「集団自決」継承に危機感/東京でシンポ
【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」訴訟やNHK番組改変訴訟を通し、メディアと権力の問題点を考えるシンポジウム(主催・日本ペンクラブ女性作家委員会など)が28日、都内であった。女性史家の宮城晴美さんや関東学院大の林博史教授(現代史)らが表現の在り方などについて意見交換した。
宮城さんは「『集団自決』や慰安婦の問題も、私たちが映像や活字できちんと伝えていかないと十年後はどうなるのか」と危機感を訴え、若い世代への継承の重要性を指摘した。
研究分野の現状について林教授は「問題意識を持って膨大な資料を調べる人がいない。学会でも取り上げられず、専任教員のポストもない。後継者が育っていない」とし、教育現場でも将来的な不安があるとの認識を示した。
宮城さんは「『集団自決』に大きな影響を与えたと思う家父長制度の論理は、皇民化教育の中で育ったのか」と林教授に質問。林教授は「中等教育を受けた十代の女性層の意識は皇民化教育と言っていい。しかし『集団自決』を受け入れる心情は階層、年代、教育歴などによって異なり、丁寧に検証すべきだ」とした。
「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの西野瑠美子共同代表も、権力の圧力と自己規制について意見を述べ、放送現場の「表現の自由」と「市民の知る権利」が侵害されたと訴えた。