街路樹がばっさり切られた伏見通。駐輪場のあたりに木があった=名古屋市中区栄
名古屋市中心部の伏見通で街路樹約100本が姿を消した。名古屋国道事務所が環境保護や事故防止を目的に自転車道や駐輪場を造るため、切ってしまった。中央分離帯の木も一部なくなり、「白い街」に夏の日差しが照りつける。
切られたのは、若宮大通の交差点から桜通までの1.3キロの50年ごろ植えられたシンジュの木。残ったのは「ご神木で切れなかった」というタブノキの大木など一部だけ。交差する通りは木が茂っているのと対照的だ。
7月に終わる工事は片側5車線の車道を3車線に減らし、幅3メートルの貨物荷さばき場、幅2.5メートルの自転車道を造るもの。街路樹があった付近は主に駐輪場にした。
違法駐車や放置自転車をなくすのと、自転車と歩行者の事故を減らすねらい。あえて車線を減らした。約8億円かかった。
最初は緑をなるべく残すつもりだったという。現場に置いた「将来図」のイラストには街路樹がしっかり植わっている。
だが、駐車場へ出入りする車の通行スペースを造ったら、肝心の駐輪場があちこちで分断されてしまい、緑にしわ寄せせざるを得なくなった。
交差点も右左折用に車線を広げたため、中央分離帯を削ることになり、ここでも一部は木を切るしかなかった。
近くの商店主(68)はあきれている。「もう植えないんですか。環境のため木陰を無くすなんてばかげている。市もビル建設を許可する時に駐輪場を義務づけたらいい」
1月、伏見通と交わる桜通や、豊橋駅前などが国の自転車通行の環境整備モデル地区に選ばれている。限られた空間しかないのは同じ。今度はどうするか。国道事務所は手法を検討している。
名古屋国道事務所の高橋誠・交通対策課長は「モデル的に駐輪場や自転車通行の専用スペースを作った。緑は残したかったが、場所が足りず、伐採はやむを得なかった。代わりの木を植える予定はない」と説明している。(伊藤智章)