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【人】川原英照貫首(かわはらえいしょうかんす)
■「宗派を超えてチベットの平和を祈念する僧侶の会」設立
■「慈悲の心は分け隔てはない」
「宗教、民族への弾圧という状況に、宗教者として黙っていられなかった。チベット仏教への蹂躙(じゅうりん)は、人類全体が直面している慈悲の危機を象徴している」
自ら代表幹事となって「宗派を超えてチベットの平和を祈念する僧侶の会」を設立したのは、先のチベット騒乱に際して、中国政府が武力鎮圧、抑圧を強める状況に、強い怒りと危機感を抱いたからだ。
18日に東京都港区の増上寺で同会の「結集(けつじゅう)」式を開いた。中国政府には、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世との直接対話、日本政府には、対話の舞台を用意するよう呼びかけた。
この結集式には、北京五輪の聖火リレー出発地を辞退した善光寺(長野市)を含め8宗派の僧侶ら約160人が参加、チベット亡命政府のラクパ・ツォコ駐日代表も駆けつけた。
ダライ・ラマ14世との縁は3年前にさかのぼる。主宰するボランティア団体がチベット難民への支援活動などに携わってきたことから、自坊への招待を重ねるなど交流を深めてきた。
だが、視線は決してチベット問題にだけ向いているわけではない。式では中国・四川大地震の被災者援助のため募金も呼びかけた。「慈悲の心は分け隔てはない。(地震もチベット問題も)根っこは同じ」と考えるからだ。
「祈るだけでは平和は来ない」。座右の銘とする先代の口癖を今回、実行に移した。「今、僧侶が何もしないなら、現代仏教は滅びる」とも言い切る。宗門の壁が厚いとされる日本の仏教界。それを超えて自分たちが立ち上がることが、さまざまな活動につながると信じている。(住井亨介)
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【プロフィル】川原英照
かわはら・えいしょう 昭和27年、熊本県生まれ。56歳。同県玉名市の真言律宗別格本山、蓮華院誕生寺貫首。NPO法人「れんげ国際ボランティア会」の会長を務めるほか、平成14年から九州看護福祉大学(同市)の非常勤講師として「ボランティア論」「国際協力論」などを講義する。