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【主張】海自艦訪中 真に意味ある交流にせよ
自衛隊部隊として中国を初めて訪問した海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が24日から4日間の滞在を終えた。
日中防衛交流の進展に役立ったといえるが、安全保障上の日本の懸念は解消されていない。問題点も浮き彫りになっている。
海自艦艇の訪中は、昨年11月に中国海軍南海艦隊のミサイル駆逐艦「深セン」が日本に初寄港した答礼であり、同艦隊司令部がある湛江を訪れたものだ。四川大地震に際し派遣が見送られた空自輸送機に代わり、毛布300枚や非常用缶詰2600食などの自衛隊の見舞品を中国側に引き渡した。
歓迎式で南海艦隊トップの蘇士亮司令員(海軍中将)は「戦略的互恵関係の発展への寄与を信じる」と語った。相互理解を深めるなどの信頼醸成に一定の進展があったことは間違いない。
問題は日中艦艇の相互訪問が対等な関係になっていないことだ。日本側が深センを東京湾内に招き入れ、当時の海自トップである海上幕僚長(海軍大将にあたる海将)が歓迎式に出向いたのに対し、中国側は首都・北京から遠く離れた湛江を指定した。海自は中国海軍トップの海軍司令員を表敬するため、北京まで足を運んだ。
相互主義は国家間の交流の原則であり、日本は適当にあしらわれているといえなくはない。
交流行事も基地内に限られた。海自呉地方隊の音楽隊による市内での演奏会は、警備上の理由から中止された。「さざなみ」の一般公開も限られた人が対象だったようだ。反日世論を指摘する向きもあるが、一般市民から隔離された防衛交流は残念である。
日本としては真に建設的な日中関係を構築するためにも中国の国防費の増加などへの懸念を示すべきである。20年連続で2けたの伸び率を示す国防費には装備購入費や研究開発費は含まれておらず、米国防総省は公表額の2倍以上と分析している。近く訪中する石破茂防衛相は、軍事力の強大化の意図などをただしてもらいたい。
相当数の中距離核ミサイルが日本を照準におさめている状況を、そのまま放置しておいて信頼醸成は成り立たない。
防衛省防衛研究所は今春の報告書で、日中防衛交流について「中国の平和的イメージの宣伝に利用される」と警鐘を鳴らしたが、日本の国益にかなう、真に意味ある交流を深めていきたい。