わが社の編集局に配属された新入社員、つまり“記者の卵”たちは現在、さまざまな研修に励んでいます。その中の一人・M君が「僕は、高梁市有漢町にとても思い入れがあるんです」と話しかけてきたので、私は「ホーッ。オレは高梁支局時代に、有漢には取材によう行ったで」と応じました。
聞いてみると、九州男児のM君は高梁市内の大学在学中に有漢で、荒廃した人工林を再生する「森林ボランティア」を四年間続けたそうです。全国の学生たちが合宿しながら、地元の専門家と一緒に行う本格的な作業。四年生の時、リーダーを務めた彼は「おいしい空気、皆さんの屈託のない笑顔…。有漢が、そして岡山県が好きでたまらなくなりました」と目を輝かせます。
私がかつて取材でお世話になった人たちの話で盛り上がり、妻の母親が有漢出身と話すとM君もびっくり。あまり目的意識のない学生生活を送った私に比べて、強い意志で一つのことを続けた姿勢に感心しました。
さて、M君も含めた新人たちは「記者として地元のために尽くしたい」とファイト満々。読者室での研修の時、私は彼らに、一枚の名刺にはわが社が百三十年積み上げてきた「信用」が詰まっていることを忘れるな▽どんな相手とでも話せるように知識の“引き出し”をたくさん持っておこう▽壁にぶつかった時、自分の趣味が必ず助けてくれる―などとアドバイスしました。自戒も込めながら。
彼らは七月一日、本社と支社に分かれ、記者生活のスタートを切ります。皆さん、厳しく温かく見守ってやってください。
(読者室・下谷博志)