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北朝鮮核申告、軍事は除外 ミサイル技術、把握は不可能

2008年6月27日1時12分

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写真北朝鮮・寧辺の核施設の衛星写真(左)と原子炉の冷却塔(右)。冷却塔は左の写真の丸印の位置。韓国・聯合ニュースが配信した=ロイター。冷却塔は27日に爆破が予定されている写真

 北朝鮮による核計画の申告は、プルトニウムの生産に関する計画と施設にとどまり、核兵器や核実験場など、軍事分野の詳細な情報は一切除かれた。弾道ミサイルへの核兵器搭載技術なども明らかになっていない。日本の安全保障への脅威は残されたままだ。

 中国の武大偉外務次官は26日、当事国が承諾したそれぞれの義務に対する「監督メカニズム」を作ることで合意したと発表したが、申告書の中身だけでは実効性が十分保障されない可能性がある。

 韓国の柳明桓(ユ・ミョンファン)・外交通商相は26日夜、「今回の申告に核兵器関連の詳細をすべて含めないなら遺憾だ」と語った。

 昨年10月の6者協議で北朝鮮は、寧辺の原子炉などを無能力化し、全核計画を申告することで合意していた。

 だが、6者協議筋によれば、北朝鮮の金桂寛(キム・ゲグァン)外務次官は「軍事機密にあたる分野は申告できない」と繰り返し表明。核兵器数のほか、核兵器1個あたりに必要なプルトニウムの量、東北部の咸鏡北道・吉州郡にある核実験場や西北部の亀城市にある起爆実験場などの申告も拒否した。

 韓国国防研究院の金泰宇・国防政策研究員によれば、核兵器に必要なプルトニウムの量は、技術の程度により3〜8キロと幅がある。抽出したプルトニウムの量だけでは核兵器の数は推計できない。

 北朝鮮が約200発を保有し、日本全体をほぼ射程におさめるノドンミサイルに搭載する小型化技術の進展状況も、今回の申告から把握することは不可能とみられる。

 さらに北朝鮮はウラン濃縮による核開発を認めないままだ。日米両国は「検証と廃棄の対象に入る」と主張し、ウラン開発の実態追及を続ける考えを示している。

 だが6者協議関係者からは「核兵器もウランも申告しなかった北朝鮮が廃棄段階で急に協力するとは考えにくい」と悲観的な見方が出ている。

 事実、金次官はこれまで、国際社会に北朝鮮を核保有国として認知するよう要求。そのうえで、米朝で核軍縮会談を開くよう求めてきた。韓国政府当局者も「今回の申告だけで、北韓(北朝鮮)が核を廃棄する意思を示したとはいえない」と認める。

 申告書には、博川のウラン鉱石製錬施設の稼働や順川などにあるウラン鉱山の生産記録が含まれているという。ただ、こうした施設は、北朝鮮が92年に国際原子力機関(IAEA)に申告した内容と大差がない可能性がある。

 プルトニウムの抽出量は38キロ前後と申告した模様だ。米国が推計する最大50キロとは開きがある。核査察や検証に詳しいロンドン大のジェームズ・アクトン氏は「稼働記録から推計できるが正確さに欠ける」と指摘する。プルトニウム量を特定するには、核施設への立ち入りや関係者への聞き取り、環境サンプル採取などが不可欠。ヒル米国務次官補は、検証体制を45日以内に確立したいとしている。

 だが、ある核専門家は「米国が6者協議の前進を優先するあまり、北朝鮮の『言い値』である申告を追認する形式的な検証になるかもしれない」と指摘。申告文書など書類に基づく分析だけで終わる可能性を懸念する。

 申告の検証について、IAEAのエルバラダイ事務局長は北朝鮮の全面協力が得られた場合も「3〜4年はかかる」と指摘している。(牧野愛博=ソウル、坂尻信義=北京、関本誠)

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