福田首相は26日、北朝鮮のテロ支援国家指定が解除されることで、日本は拉致問題解決のテコを失うのではないかと記者団に問われ、「私は全くそういうようには考えていない」と答えた。政府は拉致問題が進展しないままの「解除」に反対してきたが、いま日米が足並みを乱すのは得策ではないと判断している。
町村官房長官は同日夜、ハドリー米大統領補佐官に「決められたコースに沿ったものとはいえ、日本国民はショックを受けている」と電話で伝え、核、拉致の問題で日本の懸念に応えるよう要請した。
高村外相は同日夜「申告したこと自体はよいことだ」と記者団に述べ、一定の評価をする一方で「問題はその中身で、しっかり検証しなければならない」と指摘した。
外務省幹部は「指定解除はない方がよかった。だが日米同盟に亀裂が走ったとの印象が広がれば、北朝鮮の思うつぼだ」と説明する。米国も日本に配慮し、ブッシュ米大統領は26日の声明で、拉致問題で今後も日本と協力を続けるとの姿勢を強調した。
26日に京都で始まった主要国(G8)外相会合で議長を務める高村外相は、拉致問題を重視する日本の姿勢に各国の理解を求める。27日に発表する議長声明で「拉致問題は未解決で、今後もしっかりやっていくと再確認する」(外務省首脳)方針だ。
一方、今回提出された申告に、日本が求めてきた核兵器に関する情報が盛り込まれなかったことも政府の懸念材料だ。高村外相は27日、ライス米国務長官との日米外相会談で、拉致問題に加え、申告内容の厳格な検証を担保する態勢づくりや核兵器関連情報の今後の取り扱いなどについて意見交換する。(玉川透)