【北京=坂尻信義】東シナ海のガス田を共同開発することで日中両政府が合意したことに絡み、中国の武大偉外務次官は19日に記者会見し、合意が「中国の主権と権益を損なわない」と説明した。中国では合意への批判が大手サイトに相次いでおり、突然の会見は、世論の反発を恐れての釈明会見の様相を呈した。
会見の冒頭、武次官は「中国のネット市民も強い関心を示している」とわざわざ言及し、世論の動向を気にしていることをうかがわせた。「中国側は東シナ海の問題で中間線を承認したことはない」とも指摘。中印国境問題にも触れ、「敏感な問題の適切な処理が必要だ。そうでなければ世界中が大混乱に陥る」「誰が主権を失い、国を辱める、といった問題ではない」と説いた。
共産党機関紙・人民日報が19日、合意を「日中双方の勝利」と伝えるなど、中国指導部は国民の理解を得ようと懸命だ。しかし、大手サイトでは台湾などを日本に割譲することで合意した下関条約、対華21カ条要求と並べて批判したり、合意が発表された6月18日を「国辱の日」にすべきだと主張したりするなど、激しい書き込みが相次いでいる。多くは閲覧できず、批判の「炎上」を恐れた当局が削除しているとみられる。