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植民地支配 認識に溝/下関市教育長発言

2008年06月28日

  朝鮮半島に対する日本の植民地支配について「植民地支配は歴史的事実に反する」と下関市の嶋倉剛教育長が発言したことに、朝鮮学校関係者だけでなく地元市民からも疑問の声が上がった。朝鮮半島との玄関口として100年余りの歴史を刻んできた下関市の教育行政トップの発言だけに波紋が広がっている。

  発言のあった前日に続いて27日、山口朝鮮初中級学校を運営する山口朝鮮学園の金鍾九理事長や保護者らは再び市役所を訪れ、出張中の江島潔市長に代わって応対した本広正則副市長に山口朝鮮初中級学校への教育補助金の増額を求める要望書を手渡した。

  在日韓国・朝鮮人の師弟が通う山口朝鮮初中級学校には現在49人が在籍する。

  朝鮮学校は教科書やカリキュラムが日本の学校のものとは異なるため、学校教育法第1条に定める学校に該当せず、各種学校扱い。このため国庫補助はなく、各自治体が独自で助成策をとっている。山口では県が生徒1人あたり年5万円を補助で一般の私立学校の5分の1以下。それに加え、徳山朝鮮初中級学校がある周南市は生徒1人あたり2万円を助成しているが、下関市は山口朝鮮初中級学校に20万円と生徒1人あたり千円(合算で1人あたり約5100円)の助成にとどまる。

 金理事長らは26日に嶋倉教育長に県の額の半分の助成を求めたが拒否された。このため同席した保護者らは歴史的経緯をふまえて対処してほしいと重ねて要望したが、嶋倉教育長は「植民地支配は歴史的事実に反する」と述べた。

 下関市と朝鮮半島との往来の歴史は古い。1905年には下関と釜山を結ぶ関釜連絡船が就航。今でも朝鮮・韓国籍で外国人登録している人だけで3千数百人いる。

 JR下関駅に近い商店街グリーンモールは、戦後、朝鮮半島出身者が日本人にまじって出した露店街がルーツとされる。在日コリアンの人々の店と軒を並べる飲食店長の男性(31)は「国が謝罪していることを認めないのはおかしい。配慮が足りない発言」と話す。

 嶋倉教育長は植民地支配の事実を認めるように求めた金理事長らに対し、「そこの部分がどうだったか、皆さん方の教育に対してどのような影響があるのか」とも述べた。だが、市立小中学校が使用する教科書も、日本が朝鮮半島の「植民地」としたことを明記している。

 嶋倉教育長は27日午後になって「教育行政を行うにあたり、政府の見解を尊重する」とのコメントを出した。歴代首相は、朝鮮半島の植民地支配に対する反省と謝罪の意を繰り返し表明している。

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  ◆嶋倉教育長 発言の要旨

  嶋倉剛教育長が朝鮮学校関係者との面会や記者会見で述べた要旨は次の通り。

  いまの話で植民地支配と言うことに部分については歴史的事実に反しますので、それは私の方からそういう形では受け入れられない。植民地支配だということを前提に、そういう日朝併合の部分をいかにいうかは自由です。それを植民地支配だったと事実関係を変えて語ったんでは全然、事実関係は進まない。そこの部分は日朝交渉でちゃんとやっていただければいい話。そこの部分がどうだったか、皆さん方の教育に対してどのような影響があるのかは議員連盟の方でちゃんと話をしてほしい。(26日、朝鮮学校の保護者側の発言を受け)

  併合は植民地だという意識はない。(併合は)対等だ(27日午前、記者会見)

  私は26日の(助成の)要望において相手から筋違いのお話が突然出されたため、その話に立ち入ることを否定する発言を行った旨を説明したものです。私は当然のことながら下関市の教育行政を行うにあたり、政府の見解を尊重するものです。(27日午後、報道各社へのコメント)

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  ◆下関市内で使われている教科書の記述(抜粋)

  「日本は韓国の植民地化を進め、陸軍・海軍の軍備を増強させるなど、帝国主義国としての動きを活発にさせていきました」「1910年、日本は韓国を併合して、植民地としました(韓国併合)。朝鮮総督府をおいて支配を開始し、韓国を朝鮮と改め、首都漢城(現在のソウル)も京城と名をかえさせました」
 =「社会科中学生の歴史」(帝国書院)

  「日清戦争ののち、台湾を植民地とした日本は、日ロ戦争後、朝鮮(韓国)を支配しようとしました。朝鮮の人々の抵抗を軍隊がおさえ、1910年(明治43年)、朝鮮を併合しました(韓国併合)。植民地の学校では、日本語の教育を受けることになり、朝鮮の歴史は教えられず、民族のほこりを大きくきずつけられました。土地の制度が変えられ、その結果、多くの朝鮮の人々が土地を失いました」
 =小学校の「新編新しい社会6上」(東京書籍)

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