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【道路を問う】

『怒り痛感』神妙首相に有権者は 一般財源化8割支持

2008年3月28日

厳しい世論に押される形で、福田康夫首相が二十七日の会見で、二〇〇九年度からのガソリン税の一般財源化を直接国民に訴えた。時代の大きな変化にかかわらず、半世紀も続いてきた道路特定財源制度。無駄遣いや天下り問題が次から次へと露見、首相は謝罪に追い込まれた。本紙が関東地方の五十人に行ったアンケートでは八割が一般財源化を求めているものの、首相提案には「本当に実行できるのか」「何に使うのか不安」といった声が街で聞かれた。 

 ガソリン税について、本紙が関東地方のドライバーや有権者ら五十人に聞いたところ、道路整備も含め、使途に制約のない一般財源化を求める人は四十一人と八割に達した。暫定税率については「廃止」が十八人、「一部引き下げ」が十七人と拮抗(きっこう)する結果となった。

 一般財源化の理由の多くは「高齢化社会で医療や福祉の負担が膨大になるから」=千葉県松戸市の大学講師の男性(31)=と福祉・医療対策にも使えるようにしてほしいという声が多かった。また「無駄遣いをしている。本当に必要な道路にだけ使えばいい」=東京都葛飾区の男性アルバイト(27)=といった批判も目立った。

 特定財源を支持する人は「高速道路の整備ばかりで一般道に使われていない」=川崎市の無職男性(86)=や「制約をなくすと無駄遣いがありそう」=栃木県那須塩原市の事務職の女性(52)=といった意見もあった。

 「暫定税率は廃止した方がいい」と回答した人は、「ガソリンの価格が高過ぎる」=群馬県安中市の女性会社員(44)、埼玉県羽生市の無職男性(63)ら=という理由が多かった。「無駄遣いが多過ぎる」=横浜市の男性会社員(35)=や「暫定なのだからもっと早期に見直されるべきだ」=茨城県龍ケ崎市の団体職員の女性(50)=との意見も。

 「ある程度引き下げた方がいい」という人は「税金を安くして本当に必要な道路だけを造ってほしい」=埼玉県富士見市の介護福祉士の男性(27)=や「減収になれば別の形で市民にしわ寄せが来る」=千葉県成田市の女性会社員(37)、「道路整備で余っているのだから減らせばよい」=前橋市の男性会社員(36)=など、いろいろな理由が聞かれた。回答した五十人のうち、「ふだん自身や家族が車を運転する」という人は四十人だった。

■『実現するか疑問』 『環境に還元して』  街の声■

   仕事帰りの会社員らで込み合う二十七日夕のJR新橋駅前。福田首相の新提案について、東京都足立区の薬剤師杉田一男さん(24)は「一般財源化はいいが、素直に受け止められない」といぶかる。「どういう使い方をするのかの方向性さえ見えず、不安になる」。暫定税率の期限切れ直前の新提案に「時間がなさ過ぎる。国民に直接訴えるのもいいが、その前に与野党でもっと話を詰めておくべきだ」と批判した。  台東区の会社経営小林厚生さん(68)も「一般財源化には賛成だが問題は使途」と実効性を重視する。対決姿勢を強める民主党には「主張が通らないといって一切話し合いに応じないというのはどうか。与党だけではどうにもならない問題なんだから」と話した。

 港区の主婦(42)は「一般財源化をちゃんと実行するなら評価したい」と歓迎の様子。暫定税率についても「車の環境への影響を考えると、ある程度の税率は維持して、環境対策などに還元してほしい」と注文を付けた。

 江戸川区の男性会社員(46)は「使途を明示しないと本当に必要な道路が整備されなくなり、地方に影響が出るのでは」と心配する。「公益法人の見直しも実効性は疑問。野党と同様、首相の提案も無責任」と厳しく話した。

■世論配慮  反省、陳謝…天下り批判次々 ■

 暫定税率期限切れまであと五日となった二十七日午後、福田首相は硬い表情で官邸の記者会見場に現れ、厳しい世論を意識して反省の弁をちりばめた。

 マッサージチェアや道路ミュージカル、天下り法人の職員旅行…。首相はまず、「こんな使われ方をしている税金など払いたくないと国民が感じることは全くその通り。行政の長としておわびする」と神妙な面持ちで陳謝した。「公益法人について廃止、民営化を進める」「不透明な天下りも排除する」。首相の口からは道路官僚らの権益となっている天下りへの批判が次々と飛び出した。  さらに、大きな焦点となっている一般財源化について「なぜ道路にしか使えないのかという疑問もたくさんいただいた」と世論に配慮したことを強調。「平成二十一年度から一般財源として活用します」と政策の大転換を“宣言”した。  道路整備を含めた使途についても「地球温暖化対策、救急医療体制の整備、少子化対策」と一般の要望が強い政策を挙げた。

 昨年末に政府・与党で合意した十年間で五十九兆円という道路整備計画についても「国会審議を通じて見直しの余地があると痛感した」と五年への短縮を明言。「私はあきらめない。民主党には話し合いに応じていただきたい」と訴えた。

 

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第4部 「一般化」の裏で

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第3部 怪しい優先順位

第2部 浪費の現場

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