海軍侍従武官手記
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【道路を問う】『使える』財源 群がる自治体 まちづくり交付金2008年4月10日
これでは「道路特定財源」ではなく、市町村のさまざまなまちづくりの財布代わりとなる「道路“不特定”財源」では? 発足から五年間で総額一兆円を超す見通しとなった国土交通省の「まちづくり交付金」制度。資金の四割はガソリン税などの道路特定財源から賄われるが、使途は道路に限定されない、いわば「一般財源」だ。「使い勝手がいい」と市町村からの申請は年々増えるが、住民が「こんなもの無駄」と拒否するようなハコモノ建設も混ざっている。 千葉市に隣接し、人口約八万六千人の四街道市。市の中心部にある市役所の西側には大きな空き地が広がる。 「市はここに地域交流センターを建てようとした。目の前に文化センターがあるのに」 昨年十月、交流センター建設の是非を問う住民投票条例の制定を市長に求めた小池正孝さん(73)はそう憤る。道を挟んだ北側に千席の大ホールなどを備えた市文化センターがある。交流センターは四百席の小ホールやギャラリーなどからなる生涯学習施設として計画された。 市は〇六年に交流センター建設(約二十一億円)や武道館建て替えなど計約三十一億円のまちづくり計画を国交省に申請。五年間で約十二億円の交付が決まった。約七千六百万円をかけて設計や地質調査を行っていた。 ところが、住民の間から「第二の文化センターはいらない」と反対の声が上がり、昨年十二月の住民投票へと発展。反対票は賛成の三倍以上の約二万五千四百票に上り、市は計画を撤回した。まちづくり交付金制度で初めてのケースとなった。 「まちづくり交付金は道路財源がだぶついているから考え付いた制度だろう」と小池さん。市の元職員の女性(70)は「もうハコモノは必要ない」と話す。 一方、「建設推進を願う会」代表の北原汎・市芸術文化団体連絡協議会会長(70)は「国のお金で私たちがほしいものができれば、こんなにありがたいことはないと思った」と振り返った。市政策推進課は「考え方が市民とすれ違ったことを認めて計画を白紙に戻した」と話している。 国土交通省まちづくり推進課の話 四街道市が作成した計画に基づいて交付決定した。こういうことになってしまったのは残念だ。 片山・前鳥取県知事に聞く 国交省、なんとなく“一般化”制度の問題点について、一九九九年から鳥取県知事を二期八年務めた片山善博・慶応大法学部教授に聞いた。 ◇ 四街道市の例は象徴的だ。自治体は住民を見ずに国の方を向いている。国が自治体に有利な制度をつくると「使った方が得だ」と手を挙げ大金を使う。住民からは評価されず、借金がたまる。自治体はこういうことを繰り返してきた。 四街道市で住民投票が行われたことは画期的だ。まちづくり交付金は、住民が望まないハコモノを巨額の経費を投じて建設できるシステムで、今までも似たようなものはいくつもあった。 道路特定財源を道路に投入するところが減り、暫定税率込みで必要だとする根拠が乏しくなっている。さらに小泉内閣以降、道路財源の一般財源化の要請が続き、まちづくり交付金は何となく一般化したような体裁。国交省は完全一般化は嫌なので、妥協の産物だろう。道路財源は一般化して自治体が自由に使えるようにすべきだ。
記事一覧【連載】第4部 「一般化」の裏で
私ならこうする
第3部 怪しい優先順位
第2部 浪費の現場第1部 特定財源の現場
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